五輪で日本の喫煙環境はどう変わるのか?
「バーは大人の社交場、全面禁煙は反対」
では、外国人喫煙者たちの意見はどうだろう。日本の喫煙環境は「現状でちょうど良い」と言うのは、日本の投資銀行で働くアメリカ人のマイケル・マッキーニーさん(49歳)だ。「ただ喫煙者である僕でも、食事の席で喫煙するのは反対だ。でも、主にお酒を楽しむ場所であるバーも全面禁煙にするのはどうかと思う」
「バーは大人の社交場であり、喫煙も大人に許された権利のひとつ。喫煙の可否もオーナーが決めるべきであって、アメリカのように政府が決めることではないと思う」と、マッキーニーさんは政府主導の対策強化に疑問を投げかける。
一方、インバウンド市場を牽引する訪日中国人の観光ガイドを務め、自らも喫煙者である王軍さんには、中国人観光客の喫煙状況について聞いてみた。
「来日する中国人の40%は喫煙者で、大半は男性。彼らが路上喫煙をしてしまうのは、喫煙所が少ないからだ。特に歌舞伎町は繁華街なのに少ないと感じる。また、喫煙所への案内が中国語で表記されていないことも大きな理由だ。ただ、最近では日本の喫煙マナーも浸透しはじめ、喫煙所をきちんと探す傾向にある」
これから規制が厳しくなる見込みであることを伝えると、王さんは「北京や上海などの大都市では、建物内禁煙も増えてきたため、中国人観光客もそこまで厳しさを感じないのでは」と、柔軟に対応できるであろうと予測する。喫煙所を十分に設け、外国人にも分かりやすい案内を行うことがポイントになりそうだ。
対策強化に飲食業界以外からも戸惑いの声
さて、日本の受動喫煙防止対策だが、具体的にどんな内容になるのだろうか。厚労省が掲げた強化プランのたたき台は、学校・医療機関などは「敷地内禁煙」、官庁や社会福祉施設、大学などは「建物内禁煙」、ホテルや飲食店、遊戯施設などは「原則建物内禁煙」というものだ。
厚労省の「受動喫煙防止対策強化検討チームワーキングブループ」が10月と11月、2回にわたって公開ヒアリングを実施した。医療、飲食、宿泊、遊戯、運輸の業界団体や労働組合、消費者団体などを招き、防止対策強化に対する意見を聞くことを目的としたものだ。各団体からはどんな意見が出たのだろうか。
反対意見を述べたのは、まずは飲食業界だ。日本フードサービス協会は「客離れや売上不振による従業員の給与削減や、最悪、閉店を余儀なくされるかもしれない」と危機感を募らせる。「おもてなしの精神で、吸う人・吸わない人の共存が大切だ」
一方、日本私立大学団体連合会からも「時間的猶予と支援をお願いしたい」との声が出た。「65%の大学が原則建物内禁煙だが、なかには建物内に喫煙所を設置する大学もあり、これを屋外へと移設するには費用がかかり経営を圧迫する」