コラム

欧州議会選挙で極右政党がかつてない躍進──EUが恐れる3つの悪影響

2024年06月14日(金)10時40分

中ロの影響力の浸透

そして最後に、極右政党の台頭は、ヨーロッパに中ロの影響力がこれまで以上に浸透する契機にもなりかねない。

ドイツでは4月、AfDのマクシミリアン・クラフEU議員が中国やロシアから資金を受け取ってそれらのプロパガンダを拡散していた疑惑に関する裁判が始まり、事務所も捜索を受けている。

極右と中ロの間にある思想的な差は、実はそれほど大きくない。

どちらも多文化主義などリベラルな価値観に否定的で、強い国家権力を好み、ムスリムなど外国人を嫌う傾向が強い。そしてどちらもEUの強い結束を嫌う。

とりわけロシアに関してそれは鮮明で、多くの極右政党指導者はプーチン大統領と緊密な関係にあった。ウクライナ侵攻後、さすがにそのトーンは控え目になったが、それでも極右政党支持者にはウクライナ侵攻に関して「即時停戦」を求める意見が強く、「徹底抗戦」を支持する欧米の一般的論調とは温度差がある。

ロシアほどでなくても、中国に関しても、似たような傾向は見受けられる。

フランス愛国連合のルペン党首はかねて「ヨーロッパがアメリカに近すぎる」と主張し、各国政府がホワイトハウスに追随する傾向を批判してきた。その延長で、香港や台湾の問題にヨーロッパがかかわる必要を疑問視している。

こうしてみた時、極右政党の躍進は中ロにとっても悪い話とは限らない。

だからこそ今回の欧州議会選挙の結果は、EU各国の政府や主要政党にとって無視できないインパクトを秘めているのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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