岸田政権は「海外に資金をばらまいている」のか?
この構図のなか、日本はアメリカをはじめ欧米各国から国際協力を増やすよう求められやすい。
もともと日本のODAの規模はGNI(国民総所得)の0.2%程度で、経済規模に照らすと決して大きくない。そのうえ、日本以上のインフレ率や失業率に直面する国も多い。
ウクライナ向けODAで日本が先進国屈指の水準であることも、この文脈から理解できる。
つまり、ウクライナ向けの軍事援助に熱心な欧米の手前、この分野での協力に限界のある日本政府は、できる範囲でODAを増やさざるを得ない。アメリカの戦略に民生分野で協力することは、ベトナム戦争前後の東南アジアや、対テロ戦争におけるアフガニスタン、イラクでもみられたものだ。
内外政策の精査を
だとすると、岸田政権であろうがなかろうが、このタイミングで日本がODAを増やさない選択は限りなく難しい。
しかし、そうした「政治的援助」が増えることと、それが貧困削減など本来の目的に適うことはイコールではなく、日本(だけではないが)のODAにはしばしば手続きや採用などでの透明性の不足が指摘されている。
要するに、国内の公共事業で汚職や請負業者の不正が絶えないのと同じ構図だ。いくら外交的に必要でも、税金を投入する以上、こうしたムダを排除すべきことは当然である。
同じことは国内政策に関してもいえる。
不安定化する世界のなかで日本の国際的立場を保つためにODA増額が必要だが、そのために国民生活が軽視されていいはずはない。ODAと同様、国内の教育や社会保障に関しても、日本政府には効果や効率を意識して、資金の使い方をこれまで以上に精査することが求められる。
冷戦時代にも「援助競争」はあり、そのなかで日本はひたすらODAを増やし続け、1980年代にはアメリカと金額の首位を争うほどだった。
しかし、冷戦時代の日本は戦後復興から高度経済成長、そしてバブル経済へと経済成長の道をひた走っていた。
この点で現代とは大きく異なることを、日本政府にはもう一度思い出してもらいたい。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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