コラム

「史上最大の難民危機」で新興国でも難民ヘイトが表面化 この状況で有利になるのは...

2023年04月21日(金)15時25分

さらに、昨年11月のアメリカ中間選挙で共和党は議会下院を握ったが、それを率いるマッカーシー下院議長はトランプと近く、バイデン政権がウクライナ問題に入れ込むあまりメキシコ国境を軽視し過ぎていると主張してきた。

トランプもルペンもウクライナ侵攻そのものは支持していないが、選挙戦では国民生活を強調し、ウクライナ支援やロシア制裁に消極的だった点で共通する。

プーチンに近い立場はそれ以外にもある。

昨年9月のスウェーデン総選挙で民主党が初めて政権を握り、今月初めのフィンランド総選挙で「真のフィン人」党が第二党に躍進した。どちらも反EU、反移民政党としての顔をもつうえ、北欧最大の極右団体「ノルディック抵抗運動(NRM)」との結びつきが指摘されている。

NRMの一部のメンバーは、プーチン政権の支持基盤であるロシアの極右団体「ロシア帝国運動」の訓練所で軍事訓練を受けていたことが判明している。

こうした背景のもとで進む「史上最大の難民危機」は、欧米でプーチンと思想的に近い者の台頭を促す一因といえる。ウクライナ難民以外の難民を単に厄介者とみなす風潮が西側で高まることは、プーチン擁護にも繋がりかねないのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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