少子化対策「加速化プラン」がまさに異次元である3つの理由──社会との隔絶
「家族こそ基本」というのは一つの考え方かもしれない。周囲の子育て世帯からは「本当ならすぐに復職するより何年か子育てしたい」という声も聞く。
しかし、都市を中心に核家族化が進むなか、さまざまな機能を家族が一手に担うことに限界があるのはすでに明らかだ。所得が伸びないだけでなく、数字上は待機児童が減ったとはいえ、望んだ保育所に入所させられる人が一部にとどまる状況ではなおさらだ。
少なくとも、育休取得を容易にするといっても、公務員や一部の大企業社員を除けば、現状で1割程度(これは主要国中最下位レベル)の男性の育休取得や、雇用される者の4割(これは逆に非常に高い水準)を占める非正規労働者の育休取得が、「たたき台」の目指す向こう3年間でどの程度改善するかは疑問だ。
さらに、育休という概念が通用しない自営業やフリーランスに関しては、ほとんど言及がない(これは初期のコロナ対策でも同様だった)。
これで「安心して子育てしてください」といわれて納得できる人は決して多くないだろう。
それを分かっていながら「たたき台」を出したならその場しのぎのやっつけ仕事だし、分かっていないなら多くの人の生活実感とかけ離れた、まさに異次元の感覚といわざるを得ないのである。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
パリ五輪と米大統領選の影で「ウ中接近」が進む理由 2024.07.30
フランス発ユーロ危機はあるか──右翼と左翼の間で沈没する「エリート大統領」マクロン 2024.07.10