少子化対策「加速化プラン」がまさに異次元である3つの理由──社会との隔絶
それならそれでもいいが、この「たたき台」がもし政府方針なら、それこそ異次元レベルの意味不明さが際立ってくる。そこには主に3つの問題がある。
(1) 盛り込まれていない情報が多い
「たたき台」が政府方針だとすれば、そこに盛り込まれていない情報の扱いが不明になる。
例えば、岸田首相は2月15日の国会答弁で「子育て関連予算の倍増」に言及した。実現すればGDPの約4%に相当するが、これは主要国の平均以下の水準からいきなり世界一になることを意味する。
その後、岸田首相は答弁を事実上撤回した。それでは結局どの程度を目指すかについては「たたき台」に明記されていない。
予算規模を示さないことを政府関係者は「議論の土台だから政府としての目標はない」というかもしれない。しかし、それなら先の「育休手当8割」などの目標設定はどうなるのか(恐らくは官邸がどうしてもという部分だけ数値目標が盛り込まれ、あとは関連省庁との協議次第ということなのだろうが)。
これに加えて、「たたき台」の発表に合わせて政府では財源として社会保険料の引き上げが検討されている。
インフレが続くなか、社会保険料の引き上げ自体が大きなテーマだが、それを一旦おくとしても、社会保険料引き上げも「たたき台」で全く触れられず、財源については「骨太の方針2023までに結論を得る」とあるだけだ。
つまり、一方では政府方針と読める内容を盛り込みながら、「たたき台」には必要かつ重大な情報や方針が欠落している。
そもそも子ども家庭庁に文科省、厚労省、経産省といった関連省庁の調整しか権限がない以上、仕方ないかもしれない。
とはいえ、少なくとも、実質的に政府方針である「たたき台」に「政府方針ではなく議論の土台に過ぎない」という解釈が都合よく混ざっていることは間違いない。そこに「矛盾はない」というなら、永田町界隈以外では異次元的な解釈とみなされても仕方ない。
(2) 優先課題に含まれる疑問
第二に、優先順位の問題がある。
「たたき台」を読めば、以下の6点が優先的に取り組むべき課題としてあげられている。
①子育て世帯への直接給付強化
②子育て支援を量の拡大から質の向上に転換
③これまで対応が手薄だった年齢層を含め全年齢層への切れ目ない支援
④社会的養護や障害児支援など多様な支援ニーズに対する支援基盤の拡充
⑤共働き・共稼ぎの推進、特に男性育休の普及
⑥社会全体の意識改革
どれもこれも重要テーマということに異論は少ないだろう。①で取り上げられた児童扶養手当については、とりわけ関心を集めやすいテーマだ。
実際、上のグラフで示したように、子ども一人当たりの直接給付額で日本は先進国平均を下回る水準にある(欧米各国は日本より物価水準やインフレ率が高いので金額をそのまま比較できないものの、その分日本では平均所得が伸びていないので、このギャップは実質的にほぼ相殺されると考えられる)。
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