少子化対策「加速化プラン」がまさに異次元である3つの理由──社会との隔絶
記者会見で子育て政策について語る岸田首相(3月17日) YOSHIKAZU TSUNO/Pool via REUTERS
<具体的な数値目標まで盛り込まれた「たたき台」で意味不明さが際立つ3つの問題とは?>
・政府が発表した少子化対策の「たたき台」はいくつかの数値目標を盛り込んでいるが、特に重要な情報や方針に関しては明示されていない。
・また、優先事項が打ち出されたものの総花的で、結局何を優先させるかが不明である。
・さらに、「待機児童対策に一定の成果があった」として、保育所の拡充にひと段落つけ、家族の役割を重視する方針をこれまで以上に強調している。
鳴り物入りで発表された少子化対策のたたき台には、異次元レベルとも呼べる3つの大きな欠陥がある。
具体策が提示された「たたき台」
小倉将信こども政策担当相は3月31日、「異次元の少子化対策」のたたき台を発表した。
この「たたき台」は、岸田文雄首相が自ら議長を務め、関係閣僚や有識者、子育て当事者が参加する「こども未来戦略会議」で議論される。
その内容を簡単にまとめると、「'日本が結婚、妊娠、子ども・子育てに温かい社会の実現に向かっているか'との問いに対し、約7割が'そう思わない'と回答している」など、厳しい状況がまず認められている。そのうえで経済支援、子育て家庭向けサービス、働き方改革の推進などによって、2030年代に入るまでに少子化を反転させることを目指している。
この方針のもと「たたき台」ではいくつかの具体的内容が明記されている。例えば、
・出産一時金の引上げ(42万円から50万円)
・児童扶養手当の対象に高校生を加え、所得制限は撤廃
・育休中の給付率を現行の67%(手取りで8割に相当)から8割程度(手取りで10割)に引上げ
・低所得世帯向けの給付型奨学金の対象を拡大
こうしてみると、子育て政策に消極的だった政府がやっと本腰を入れたかという感想もあるかもしれない。
議論の土台か、政府方針か
しかし、実際に「たたき台」に目を通すと疑問も多い。根本的なものとしては「これはそもそも'たたき台'なのか?」と聞きたくなる。
一般的にたたき台とは素案あるいは「細かいことは決まっていない段階のアイデア」で、企画書の前段階と理解される。そこでは会議における共通認識の土台となる、現状報告や参照データ整理が中心になる(だから普通は新人に任される)。
しかし、今回の「たたき台」は一部に具体的な数値目標まで盛り込んでいて、一般的な理解より踏み込んだ内容だ。そのため、議論の土台というよりむしろ政府方針と見た方がよい。
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