こけおどしの「民主主義同盟」──反中世論に傾いた米外交の危うさ
リモートで開催された民主主義サミットに臨むバイデン大統領(2021年12月9日) Leah Millis-REUTERS
・民主主義サミットは、人権を尊重しているとも民主的とも言えない国も多数参加したもので、頭数優先だったといえる。
・その多くの国は米中に二股をかけており、「民主主義サミット参加=反中」という理解は単純すぎる。
・そのうえ、民主主義サミットに参加したことで「アメリカのお墨付きを得た」これらの国では、これまで以上に人権状況が悪化する恐れすらある。
中国との差別化を意識して人権や民主主義を強調するほど、アメリカはドツボにハマる。いくら国際的に人権を力説しても、中身のほとんどない'民主主義同盟'しかできないからだ。それは国内の反中世論を満足させたとしても、実行力ある中国包囲網からはほど遠い。
人権外交の限界
北京五輪に日本も政府関係者を送らないことになったが、岸田首相は「外交的ボイコット」の用語を極力用いず、「政府関係者は派遣しない」といいながらも現職議員でもある橋本聖子JOC会長の出席を認めている。
こうしたグレーな対応はいつものことだが、今回に関してはやむを得ないかもしれない。アメリカ主導の人権外交には勝算が薄いからだ。
大前提として、香港や新疆ウイグル自治区での人権状況が深刻なことは疑いない。
その一方で、「人権や民主主義を尊重する国の包囲網で中国を封じ込める」というアイデアはアメリカでも日本でも反中世論を満足させるものだろうが、実質的な効果をほとんど期待できない。
その最大の理由は、そもそも「人権や民主主義を尊重する国」が結束したところで、世界の多数派にはなれないことだ。
名は体を表すか
アメリカのシンクタンク、フリーダム・ハウスは毎年、世界各国を「自由な国」、「部分的に自由な国」、「自由でない国」に分類しているが、その最新版によると「自由な国」は世界全体で82カ国だった。これは国連加盟国(193)の半分にも満たない。
その一方で、12月9〜10日にかけて開催された民主主義サミットには、アメリカの呼びかけに応じて112カ国が参加した。これだけみれば、世界の多数派が'民主主義同盟'に与したかに映る。
しかし、その内訳をみると、人権を尊重しているとも民主的とも言いにくい国が数多く参加していることがわかる。
例えば、民主主義サミット参加国にはフリーダムハウスの評価で「部分的に自由な国」と評価されるハンガリー、インド、フィリピン、ケニア、コロンビア、ナイジェリアなども含まれた。その多くでは選挙が行われていても、ジャーナリストの拘束、治安部隊によるデモの強制排除、外国人ヘイトの扇動、LGBTの迫害、児童労働といった人権侵害が目立つ。
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