海外から中国に移送される台湾人──犯罪人引渡し条約の政治利用とは
もっとも、途上国では話が別だろう。ほとんどの途上国では、外国人犯罪者の人権保護より国内の治安対策の方が優先されやすい。
また、もともと中国と関係の深いカンボジアのような国だけでなく、フィリピンやケニアのように中国と外交的な摩擦を抱える国にとっても、投資や貿易だけでなくワクチン外交で攻勢を強める中国との関係を無視するより、中国の要請に応じて多少なりとも恩を売る方が外交的に得策であることも確かだ。
少なくとも先進国のコロナ協力がほとんどかけ声倒れになっている限り、途上国がこの分野で先進国に協力的になることは期待しにくい。台湾人引渡し問題は「人権を守れ」というかけ声だけで人権保護が実現できないことを象徴するともいえるだろう。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
※筆者の記事はこちら。
「核兵器を使えばガザ戦争はすぐ終わる」は正しいか? 大戦末期の日本とガザが違う4つの理由 2024.08.15
パリ五輪と米大統領選の影で「ウ中接近」が進む理由 2024.07.30
フランス発ユーロ危機はあるか──右翼と左翼の間で沈没する「エリート大統領」マクロン 2024.07.10