コラム

加速するロシアのアフリカ進出──頼るのは武器とフェイクニュース

2019年12月05日(木)14時08分

ケニアのケニヤッタ大統領と握手するプーチン大統領(2019年10月24日) Sputnik/Alexei Druzhinin/Kremlin via REUTERS


・ロシアはアフリカ進出を加速させており、軍事力とフェイクニュースがそのための重要な手段である

・アフリカではテロが広がっており、空爆など強硬な掃討作戦でロシアが各国に協力し始めれば、「頼れる大国」として認知が高まり得る

・その一方で、ロシアはフェイクニュースの発信でアフリカの「独裁者」を支援している

2020年大統領選挙とウクライナ疑惑に頭が向かいがちなトランプ大統領をはじめ、多くの大国の指導者が国内問題で足元をとられている間に、プーチン大統領は海外進出に余念がない。そこでは軍事協力とフェイクニュースが重要な手段になる。

ロシアのアフリカ復帰

ロシア国内では格差の拡大などが深刻化しているが、プーチン大統領は不満を力で押さえ込みながら、海外での影響力の拡大を図っている。そのターゲットには、米中が進出レースを繰り広げるアフリカも含まれ、ロシアはここに割って入ろうとしている。

その狼煙ともなったのが、ロシアの保養地ソチで10月23、24日に開かれた、アフリカ54カ国の首脳を招いた国際会議ロシア・アフリカ・サミットだった。

日本を含め、アフリカ進出を目指す各国は、同様の会議をすでに定期的に開催していて、ロシア・アフリカ・サミットは今回が初めてだ。


ただし、これまでロシアがアフリカと無縁だったわけではない。むしろ、冷戦期のソ連はアフリカでアメリカをしのぐほどの影響力を誇示した。そのため、現代のロシアによるアフリカ進出は新規参入というより本格復帰といった方が正しい

ロシアがアフリカに復帰する目的は何か。

ロシア・アフリカ・サミットの共同宣言をみると、ロシア企業による資源開発協力などもうたわれているが、それより政治、安全保障などの協力に重点が置かれている。

アフリカは世界の最貧地帯だが国の数は多く、国連加盟国の約4分の1を占める。つまり、ロシアは国際的な発言力の増大を目指し、アフリカとの関係を強化しようとしているとみてよい。

ロシアのアドバンテージとは

アフリカ進出を加速させようとするロシアにとって、米中などのライバルに対する最大のアドバンテージは軍事協力にある。

アフリカには「イスラーム国」(IS)など中東を追われたイスラーム過激派が多数流入している。そのため、ロシア・アフリカ・サミットでも、訓練や兵站部門での支援、過激派のメッセージ発信に使われるソーシャルメディアの規制、過激派に関する情報交換など、安全保障面での協力が強調されている。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB議長に「不満」、求めれば辞任するだろう=トラ

ワールド

トランプ氏、中国と「良いディールする」 貿易巡り

ビジネス

米一戸建て住宅着工、8カ月ぶり低水準 3月は14.

ビジネス

ECB、6会合連続利下げ 貿易戦争で「異例の不確実
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 7
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 8
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    「体調不良で...」機内で斜め前の女性が「仕事休みま…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story