中国はなぜいま少数民族の弾圧を加速させるか──ウイグル強制収容所を法的に認めた意味
貿易戦争だけでなく、中国製スマートフォンに情報漏洩の危険があるとFBIやCIAが注意喚起するなど、米中対立がエスカレートの一途をたどるなか、9月21日にポンペオ国務長官は新疆ウイグル自治区での人権侵害を批判。これ以来、アメリカはしばしばウイグル問題を取り上げてきた。
中国がこのタイミングで再教育キャンプを合法化したのは、アメリカの「人権攻勢」に抵抗するためとみられる。
先進国での評価 ≠ 世界の評価
なぜ再教育キャンプを合法化することがアメリカへの抵抗になるのか。ここで、やや面倒だが、前提として4点ほど確認する必要がある。
1.アメリカをはじめ欧米諸国の政府は人権や民主主義の重要性を強調するが、外交的に関係の悪い国に対して、そのトーンは特に強くなる(中国、キューバ、イランなどの人権問題は頻繁に取り上げられる一方、インド、コロンビア、サウジアラビアなどでのそれは不問に付されやすい)
2.友好国の国内問題に口を出さないことは現実の外交の観点から当然かもしれないが、しばしば先進国から「説教される」立場にある大多数の開発途上国の目からみて、それが「先進国のご都合主義」と映っても不思議ではない
3.さらに、開発途上国には「国家独立のシンボル」でもある法律の策定が外部からの圧力や干渉にさらされることへの警戒が強い
4.ところで、中国の国際的な支持基盤は、今も昔も開発途上国である
実際、ポンペオ長官の声明以前、「アメリカ第一」のトランプ政権は中国の人権問題に大きな関心をみせていなかった。つまり、トランプ政権は対立が激化する中国の国際的イメージを低下させるためにウイグル問題を強調し始めたわけだが、これは「人権を本心から尊重しているから」というより、露骨に「手段として人権を利用するもの」である。
この状況下、再教育キャンプを合法化することは、中国政府にとって「アメリカは人権を政治的に利用している」、「過激派を取り締まる法律を策定する権利はどの国家に認められているはずなのに、それさえもアメリカは自分が気に入らなければ批判する」、「理不尽なのはアメリカの方だ」というメッセージを世界に発することになる。
つまり、再教育キャンプに法的根拠を与えることで、中国は開発途上国での支持を固めようとしたといえる。
トルコへの圧力
このタイミングで再教育キャンプが合法化された第二の理由は、トルコへの圧力である。
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