シビリアンコントロールだけでない自衛隊日報問題の根深さ──問われる「安全神話」
一方、南スーダンでは2013年12月に内戦が発生。その直後に菅官房長官は「自衛隊の駐屯地周辺は概ね平穏」と発言。その後も、現地の日本人ボランティアが「自衛隊の駐屯地は首都ジュバのなかで最も危険な場所にある」と報告するなか、稲田防衛相(当時)が駐屯地周辺の状況を「戦闘」ではなく「衝突」と表現するなど、政府は危険を過小評価し続けました。結局、2017年3月に政府は「当初の目的を達した」と自衛隊の完全撤収を発表しましたが、その後も南スーダンでは内戦が続いています。
矛盾が生んだ「神話」
政府が国内向けに危険を過小評価し、「安全」を強調した大きな背景には、国際的な評価のために自衛隊の海外派遣を進める方針がありました。
冷戦終結後、日本政府とりわけ外務省は、国連の安全保障理事国入りを目指し、「国際貢献」を模索。しかし、湾岸戦争(1991)で日本はクウェート解放のために130億ドルの資金協力をしながら、国際的に全く評価されませんでした。これをきっかけに、日本政府は「カネだけでなくヒトも出す」方針に転じたのです。
海外での評価を重視するなら、危険地帯ほど自衛隊の派遣先として魅力的になります。とりわけイラクの場合、米国からの要請があったことも、これを促しました。
その一方で、自国の部隊の安全を願う心理は万国共通ですが、日本のそれは特に強いといえます。派遣先で自衛官に万一のことがあった場合、世論が政府批判に傾くこともあり得ます。
そのため、危険が指摘されるイラクや南スーダンに自衛隊を派遣しつつ、「自衛官の安全」を求める世論をクリアするという課題に直面した政府は、「その国全体はともかく自衛隊の活動地域は安全」という説明に終始したのです。
しかし、これが一種の「神話」だったことは既に述べた通りで、そもそも安全な土地なら自衛隊の派遣が要請されることはありません。
さらに、「自衛隊の派遣地域は安全」という政府答弁で(どこまで本気かはともかく)納得した世論もまた、この矛盾を大きくしたといえます。
矛盾のしわ寄せ
この矛盾を最終的に引き受けざるを得なかったのは、現場の公務員でした。
イラクでも南スーダンでも、自衛隊の派遣に熱心だったのは国際的な評価や米国との関係に気を配ってきた官邸や外務省で、自衛隊を所管する防衛省は必ずしも積極的ではありませんでした。しかし、とりわけ現地に派遣された自衛官にとって、「自衛隊の派遣地域は安全」という政府見解には死活的な意味がありました。
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