コラム

日本から学ばず、デフレ・経済停滞から抜け出せなそうな中国

2024年12月12日(木)06時30分

関税の掛け合いは、それぞれの企業の貿易・投資活動に制約をもたらし、双方が経済的なダメージを負う。焦点は、この負の影響をオフセットする、マクロ安定化政策が同時に繰り出されるか否かで、それによって2025年の米中それぞれの経済成長率が大きく変わる。

中国経済の分析は難しいが、金融政策の「変更」発表をどう捉えるか

米国では、財務長官に就任する見通しのスコット・ベッセント氏が、GDP成長率3%を実現しつつ、2028年までに財政赤字を国内総生産(GDP)比3%に削減、日量300万バレル相当の原油増産、という3本の矢を掲げながら政策対応を行う。

3%の経済成長を実現するには、適切な金融財政政策も当然ながら必要になるので、関税引き上げと同時に減税政策などで成長が下支えされるだろう。ヘッジファンドを経営する同氏は、適切な経済安定化政策を理解していると判断される。

一方で、中国当局はどう対応するのか。12月9日に、習近平国家主席をトップとする中央政治局が来年の金融政策を「適度に緩和的」とすると報じられた。これまでは「穏健な」金融政策としていたが、スタンスが変わったと伝えられている。また、国営新華社通信によると、指導部は財政政策に関しても「より積極的な」と、従来の「積極的な」から表現を強めた、とのことである。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書が2025年1月9日発売。

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