金融緩和で就業機会が増え、女性活躍の土台が整った──次期日銀総裁候補、植田和男氏の指摘について
いずれにしても、金融緩和によって「デフレではない状況」とともに、労働市場を底上げする経路で経済成長を支え、多くの女性、高齢者に新たな就業機会提供したことになる。そして、特に女性の就業者が目立って増えた事は、ESGあるいはSDGsの観点で、持続可能性や多様性が向上したとも言える。なお、雇用者に占める女性比率は43.0%(2012年末)から45.9%(2022年末)まで上昇している。
ESGが企業経営の指針として重視され、女性活躍の観点から、女性役員・管理職を増やす上昇企業が増えている。男女間の賃金格差を、上場企業が公表する制度設計も固まりつつある。これらの対応が、社会での「女性活躍」を促す対応として妥当かは議論は様々だろう。
ただ、先述したとおり、過去10年で金融緩和を徹底したことでデフレと不完全雇用の是正で女性の就業機会が広がり、「女性活躍」の土台が整ったことは確かである。黒田総裁の金融政策によって労働市場の改善で女性の就業機会が広がった成果は、多様性や持続性の観点から社会的な意義が大きかったと評価できる。
「異次元緩和の副作用」がメディアではフォーカスされ易いが
日銀の金融政策について、「異次元緩和の副作用」がメディアや金融市場において、フォーカスされ易い。ただ、黒田総裁以前の、デフレが深刻だった時期には、ブラック企業が流行語になる中で、女性が働く機会は余り広がらなかった。黒田体制が行ってきた金融緩和は、これらの問題を改善することで、その恩恵は経済活動や社会全般に幅広く及んだ。こうした幅広い観点から、金融政策は評価されるべきだと筆者は考えている。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません
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