日銀新執行部で円安が進むか──雨宮正佳氏が新総裁となる場合の影響を考える
「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診」と報じられた...... REUTERS/Issei Kato
<「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診」との記事が大手メディアで報じられた。雨宮正佳氏の総裁就任は相応に確度が高いと思われる。雨宮氏が新総裁となる場合の影響を考えたい......>
2月6日に、「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診」との記事が大手メディアで報じられた。記事によれば、政府関係者や政治家ら複数がソースとなっている模様である。
昨年末から日銀の政策決定に関してメディアの観測報道がヒートアップし、中には的外れな記事も多かった。この記事に関しては、当日に、政府関係者から否定されており真偽は不明である。ただ、今国会での任命が迫るこの時期の大手メディアの報道であり、雨宮氏の総裁就任は相応に確度が高いと思われる。以下では、報道通りに雨宮氏が新総裁となる場合の影響を考えたい。
黒田総裁の政策姿勢はある程度引き継がれるだろう
雨宮氏は、日銀総裁の最有力候補として、メディアで名前が挙げられていた本命である。他にも、中曾宏氏、山口広秀氏の副総裁経験者が候補者としてメディアで挙がっていた。雨宮氏の昇格となれば、現在の黒田総裁の政策姿勢はある程度引き継がれる。岸田政権が金融政策の継続性を重視した、経済成長を重視する自民党政治家との軋轢を避けた、という観点から無難な人選ということだろうか。もっとも、黒田総裁の体制を確実に継承できる、他の選択肢もあったのではないかと筆者は考えている。
この報道が報じられた、2月6日早朝にドル円は1ドル131円付近から132円台半ばに、円安ドル高に動く場面があった。候補として挙げられていた、雨宮、中曾、山口の各氏の相対的な比較では、雨宮氏がもっともハト派に位置付けられるとの、市場参加者の認識に沿った初期反応がみられた。
安倍第二次政権誕生とともに黒田総裁体制となり金融緩和が強化された、2012年末から2013年初に1ドル80円を下回っていたドル円は100円台まで大きく円安に進み、その後も円安基調が定着した。当時は、金融政策のレジーム(体制)が変わったと見なされた。具体的には、主要先進国に遅れて日銀が2%インフレ目標に対してはっきりコミットして、更に従来の日本銀行の政策に対して批判的な論客を総裁、副総裁に任命した。
これで、デフレ克服期待が強まり、日本の金融市場の姿は大きく変わった。超円高の修正をきっかけに、日本株上昇、そして経済成長復調、失業率改善、デフレ脱却、などがその後に起きた。
当時と比べると、現在の金融政策を取り巻く環境はかなり異なっている。現在、2%インフレの「完全実現」には至っていないが、インフレ率がプラスに転じているし、大企業中心に賃上げを積極化させるなど「デフレではない状況」が定着しつつある。2021年以降各国が高インフレへの制御に苦慮する中で、物価安定という観点では、日銀の政策対応は相対的には上手くいっていると位置付けられるだろう(日本のメディアでは、金融緩和政策への批判が目立つが)。
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