うまく社会復帰できない元受刑者...映画『過去負う者』は問う、なぜ社会は過ちに不寛容か
補足せねばならないが、日本の再犯者率(検挙された人に占める再犯者の割合)は約50%とかなり高いことは事実だ。彼らの社会復帰が阻害されていることに加え、刑務所の処遇が反省・更生よりも懲罰に重きを置くシステムであることも、再犯者率が高い要因の1つだろう。
「僕はずっと社会の根底にある、時代の無意識のようなものを映画ですくい取る作業を続けています」と語る監督の舩橋淳は、多くの元受刑者に面会し、「一歩間違ったら自分も罪を犯すかもしれない、自分と彼らは何も変わらない」と断言する。
実はエチュード(即興)的な撮影は、前作『ある職場』も同様で、舩橋監督の真骨頂だ。終盤の劇中劇と観客の反応を見ながら胃が痛くなる。全員の言葉があまりにリアルで、虚構と現実が逆流する感覚に襲われる。
テーマは重い。だからこそこの手法が功を奏している。稀有な映画体験と言っていいと思う。
『過去負う者』(10月公開予定)
監督/舩橋淳
出演/辻井拓、久保寺淳、紀那きりこ、みやたに
『過去負う者』の全国配給のためのクラウドファンディングを9/12まで実施中。
返礼品は全国の刑務所で作られる刑務所作業製品。
詳しくは 公式HP:https://kako-oumono.com/
<本誌2023年9月5日号掲載>