決して聞き流せない、麻生副総裁の「戦争といじめ」発言
いじめの比喩を使うのは、あくまで「いじめられる側」としての恐怖を喚起することが目的である。今年の発言についても、麻生氏は明らかに日本をロシアでなくウクライナの側だけに同一化させて論を展開している。
だが過去を振り返れば、日本が現在のロシアのような行動を取ってきた歴史を忘れるわけにはいかないし、プーチン政権のレトリックにも見られるように、攻撃を仕掛ける側はたびたび自らの被害者性をでっち上げて加害の大義としてきた。
麻生氏はいじめ発言の数日前にこんなことも言っている。自民党は結党以来ずっと安全保障の問題をやってきた、日本では普通の生活で防衛を考える機会があまりない、「政治に関心を持たなくても生きていけるというのは良い国」だと。
安全保障は政府にお任せで庶民には何も考えずにいてほしいということだろうか。
確かに防衛で頭をいっぱいにしたいとは思わない。だが、攻撃される側の恐怖ばかりを訴え、攻撃側となる可能性への想像力を欠いたまま「強さ」を志向する言葉を聞くにつけ、無関心ではいられないという思いのほうがむしろ強くなった。
<2022年7月26日号掲載>
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