- HOME
- コラム
- 現代アーティストな生き方
- 「本物より本物らしい世界の終焉」を捏造した杉本博司
「本物より本物らしい世界の終焉」を捏造した杉本博司
しかし、皮肉にも近年のコロナ禍や深刻化する異常気象、ロシアのウクライナへの軍事侵攻などによって、彼の妄想はより現実味を帯びることになる。
世界が徐々に好転するような直線的な時間概念はもはや成立しないにもかかわらず、永遠の成長が人類の幸福を保証するという資本主義の神話が信仰され、成長のための破壊が進む、近代の限界点、いや彼岸に見る「進歩の末路」、そして環境にとって最も過酷な人類の存在、その本質的な貪欲さ、狂気、むなしさを前に、杉本を創作へと駆り立てるのは、改めてその起源に立ち戻って、何故このようになってしまったか、また、人類の記憶として、精神と技術を遺す表現は何かを問い、それを想い起こすための未来の遺跡、または、ある種の浄土のような装置を作ることだという。
一見、多様な方向に向いているように見える杉本の活動は、「芸術は人類に残された最後のインスピレーションの源」(注6)であることを信じて、壮大な時間感覚と宇宙規模の視点のもと、アーティストとしての自らの責務を全うするという意味において、趣味か芸術か、骨董か現代アートかといった議論を軽やかに超えて、すべからく繋がって一体化している。
ただ、太陽光が、「杉本博司ギャラリー 時の回廊」に設置されたプリズムを通して分光され、刻一刻と異なる色彩のスペクトラムを見せるように、杉本博司も様々な光の当て方、条件下で無限に異なる姿を見せるのである。
注6. 中村佑子監督による杉本のドキュメンタリー映画「はじまりの記憶」、2012年
本稿は、筆者執筆の以下の原稿の一部を含む。
"The exhibition as machine for stopping time" Cahiers d'art, No 1, 2014
「世界の終わりの始まり」『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展図録、東京都写真美術館、2016年
「「瑠璃の浄土」考―― 一切法は因縁生なり」『杉本博司 瑠璃の浄土』展図録、平凡社、2020年
「杉本博司と直島――「時の回廊」へ」『杉本博司ギャラリー 時の回廊ハンドブック』、2022年
参考文献:
杉本博司『苔のむすまで』新潮社、2005年
杉本博司『アートの起源』新潮社、2012年
杉本博司『江之浦奇譚』岩波書店、2020年
杉本博司『影老日記』新潮社、2022年
横尾忠則「呪われた」 デザイナーから画家になり、80代で年間100点の作品を生む 2023.04.17
最初の作品集は「遺作集」、横尾忠則の精神世界への扉を開いた三島由紀夫の言葉 2023.04.17
世界26カ国で実施される宮島達男の「柿の木プロジェクト」――絶望から再生へ 2022.12.09
「生き残った以上は、後悔する生き方はしたくない」──宮島達男のアーティスト人生 2022.12.09
大竹伸朗は、いかに人と違った経験と生き抜く力でアーティストの道を開拓していったか 2022.10.31
李禹煥「日本では侵入者、韓国では逃亡者」。マイノリティであることが作品に与えた力 2022.10.24
-
港区 営業アシスタント「海外ネットワークを持つ外資系総合商社」フレックス/残業月10h/年休120日
コーンズ・アンド・カンパニー・リミテッド
- 東京都
- 年収500万円~550万円
- 正社員
-
一般事務/メーカー 残業なし/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
貿易事務/流通関連 駅チカ/外資系企業/20-30代活躍中
株式会社スタッフサービス ミラエール
- 東京都
- 月給20万6,000円~
- 正社員
-
経験5年必須/プリセールス/年商250億円企業/リモート可/外資系企業
SAI DIGITAL株式会社
- 東京都
- 年収400万円~750万円
- 正社員