コラム

大卒内定率「過去最高77%」に潜むミスマッチ 見逃せない「53.1%」

2018年12月04日(火)12時00分

これからの未来は、不確実性が高まる。

英国オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが2013年9月に書いた「THE FUTURE OF EMPLOYMENT」という論文で、米国の現在の雇用の約47%が危険にさらされることが知らされた。それ以来、AI(人工知能)やロボットの進化によって、なくなる職業が各所で議論されている。

筆者が伝えたいのは、逆算ではなく、その時々で自分で調べ、判断し、意思決定できる力を身に付けることの重要性だ。社会の変化という激流の中でも、自らの価値を出せる場所を見つけ続け、生き抜ける力を身に付けることこそが重要なのだ。

世の中を知り、自分との相性を真剣に考え、社会の中でどのように生きていくかを考える。そして、その際に必要なことを自ら特定し、知識や技術を身に付けていく。

その思考や行動を学生時代から始めれば、やがて習慣化し、社会人になってからも自立してその人らしいキャリアを積めるはずだ。逆算ではない、自立型のキャリア観の醸成が求められている。

学校も、企業も、学生も、未来のための覚悟が必要だ

教育関係者でキャリア教育や就職支援にたずさわる方は、ぜひ学生が自立し、70歳まで働いていく際の「換金価値」を、時代の激流の中で、その都度自ら探し続ける力を身に付けるための支援をしていただきたい。

企業で働く方は、自社が本質的な採用活動をしているか、ぜひチェックしていただきたい。極端な表現だが、だまして入社させても、すぐに辞めてしまうのが現状だ。

力を注ぐのは、自社を良く見せようとすることでも、とにかく採用のための母集団を集めようとすることでもない。本当に合う人を見つけるために、適切な情報提供を早期の学生からきちんと行っていくことだ。

最後に、学生の皆さんに伝えたいのは、自分の人生は自分のものであるということ。裏返すと誰も責任を取ってはくれない。

人生100年時代には、70歳まで仕事で価値を出し続けなければならない。そのための最初の選択である新卒就職は、どんなに時間を掛けても掛けすぎということはない。悔いのない人生のために、社会に対する視野を広げるための活動を、堂々と早くから始めてほしい。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 10
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story