中国、2年ぶりのマイナス成長か
そのなかで目立つのが、自動車の販売を回復させるための施策である。まず、6月1日から12月末までの間、車両価格が30万元以下、エンジン排気量2リットル以下の車については車両購入税の半額を免除する。同様の政策は2009年と2015年にも実施され、いずれも乗用車の販売拡大、特に中国系メーカーの販売拡大に効果があった。2009年と2015年の政策ではエンジン排気量1.6リットル以下が減税の対象であったが、今回は2.0リットル以下まで対象が広げられたため、中国で売られている乗用車のおよそ9割が減税の対象となる。
中国政府はさらに大都市での購入制限の緩和や都市間での中古車売買の解禁などを求めている。中国では2018年以降乗用車販売が減少傾向にあるが、その大きな理由は北京、上海、深圳など主要な大都市で乗用車の購入制限が行われていることにある。ナンバープレートの発行枚数が制限され、高値で競り落とすとか抽選に当たらない限り、車を買ってもナンバープレートがもらえず走れないのである。中央政府の購入制限緩和の要請にどう対応するかは地方政府に任されているものの、少なくとも減税措置の後押しにより、乗用車の販売台数は4~5月の大きな落ち込みから回復するであろう。年間ではむしろ昨年の販売台数2148万台を上回るのでは、と期待されている(『21世紀経済報道』2022年6月1日)。
農村でもEV推進
また、農村部における新エネルギー自動車(EV)の販売促進活動が展開されることになった。従来は充電設備の不足や値段の高さからEVの販売は都市が中心だったが、農村部での充電設備の建設を推進しつつ、EVの販路を拡大しようという政策である。
消費者の消費を直接に後押しするために、クーポンの配布も行われている。これは全国一律ではなく、地方政府がそれぞれ内容や金額を決めている。例えば、深圳市ではEVを購入すると最高で1万元のクーポンが与えられる。(つまり1万元値引きされる。)また、外食、ホテルでの宿泊などに対して100元の金券として使えるクーポンも各都市で発行されている。
企業に対する政策としては、付加価値税の還付を前倒しで行う政策が実施された。付加価値税の還付とは、企業の仕入れ品にかかっている付加価値税額が、売上に上乗せした付加価値税額を上回っている時、その差額分を税務署から還付してもらえる制度である。中国では2018年までは差額が生じた場合は翌年に繰り越すことになっていたが、2019年から企業は還付を受けられるようになった。今年はその還付を行う時期を前倒しし、年間で1兆6000億元の還付を行うことで企業の資金繰りを助けようとしている。
以上のように、自動車を中心に必死の景気回復策が打ち出されている。そのため、6月以降の鉱工業生産は4~5月の減産を回復する展開になるだろう。一方、サービス業に関しては、自動車に対するほど積極的な回復策が採られていない。そのため、4、5月にできなかった支出(例えば旅行)を6月以降に「リベンジ消費」するという展開にはなりにくい。
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