【EVシフト】数多のEVメーカーが躍動する中国市場、消えた日本企業
しかし、蔚来汽車は創業以来ずっと赤字で、2019年末までの累損は4300億円を超え、車両の発火事故が起きるなど企業の存続が危ぶまれた。2020年になって合肥市政府などの出資と国有銀行6行からの融資で総計2700億円の資金を獲得して一息ついたところである。2020年1~10月には昨年同期の2倍以上となる3万1430台を販売して新興EVメーカーのなかではトップである。
蔚来汽車は2018年にニューヨーク証券取引所に株式を上場しているが、新興メーカーのなかでは他にプラグイン・ハイブリッド車メーカーの理想汽車が2020年7月にナスダックに上場し、8月にはEVメーカーの小鵬汽車(XPeng)がニューヨークに上場した。
小鵬汽車の創業者はアリババの元社員で、2014年に創業し、それ以来、アリババとシャオミからの出資を受けてきた。同社は「スマートEV」を標榜し、AIを利用して自動運転する車を作ろうとしている。同社も自社工場を持たず他の自動車メーカーに生産を委託していたが、2020年上半期に自動車生産の許可を得て広東省に工場を建てた。2020年1~10月の販売台数は1万6057台である。
50万円を切る電気自動車も
これら新興EVベンチャーを迎え撃つ既存の自動車メーカーの代表格は、メーカー別で販売台数トップのBYDである。「既存の」といっても、同社も2003年に自動車生産に参入したわりと新しい民間自動車メーカーで、自動車を作り始める以前は二次電池の生産や電子製品の受託組立をしていた。自動車産業に参入したのも将来EVメーカーになるための布石であり、中国の元祖EVベンチャーといってよい。
既存メーカーのなかで今年の夏に驚くべき動きを見せたのが、上汽GM五菱である。このメーカーはもともとスズキから技術移転された軽ワゴン車を作る国有自動車メーカーだったが、2002年に上海汽車とGMが資本参加し、上汽GMグループの一員となった。
EV業界ではそれほど目立つ存在ではなかったが、今年8月に販売価格が2万8800元(46万円)という破壊的なお値段のEV「宏光MINI」を売り出すと、たちまち月間2万台を売り上げるヒットとなり、ブランド別でテスラの「Model 3」を抜いてEVのトップに躍り出た。
「宏光MINI」は2ドアで、後部のシートを立てると4人乗れる、という軽乗用車タイプのEVである。航続距離は120キロと比較的短いが、最高時速は100キロまで出せるという。搭載する蓄電池の容量を小さくすることで値段を安く抑えているのであろうが、それにしても50万円を切るEVというのは驚くべき安さである。
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