中国経済のV字回復は始まっている
産業別にみると、3月の回復が著しいのが鉱工業で、1~2月はマイナス13.5%まで落ちたが、3月はマイナス1.1%まで戻した。鉄鋼、石油化学、ICなどの装置産業はコロナ禍のさなかでもプラス成長を維持する一方、自動車や電子など組立型の産業は工場を閉鎖したので大きなマイナスとなった。だが、電子産業は3月に多くの工場が再開したようでプラス9.9%とV字回復した。一方、自動車産業は3月もまだマイナス22.4%と落ち込んだままである。これは部品がまだ揃わないとか、自動車販売店からの注文が入ってこないといった事情によるものであろう。だが、自動車販売は早晩回復するであろう。
作りだめできないサービス業
一方、サービス業の回復は遅れている。サービス業は生産と消費が同時になされるという特徴があるため、消費が回復しないと生産も回復しない。小売売上高の回復が鈍いことからもわかるように消費は3月にもあまり回復していない。中国国内での新型コロナウイルスへの新規感染者がほぼゼロになったのが3月中旬だったので、3月中に消費が回復しなかったのも当然である。しかし、武漢市の都市封鎖が解かれるなど移動制限が解除された4月にはサービス業や小売も回復するであろう。
実際、4月になってほとんどの地域で昨年並みの経済活動が戻ってきていることは、以前に本コラムで紹介した人々の移動状況に関するビッグデータで確認できる。人々の市内での移動状況を2020年3月29日から4月4日までの一週間と2019年3月17日から3月23日までの一週間とで比較してみると、昨年より人々の移動が少ない地域は89カ所、昨年より移動が増えている地域が274カ所となっている。
武漢市はまだ昨年より人々の移動が63%少なかったし、域外からの人の流入を制限している北京市もマイナス27%だったが、農村地域などではおおむね昨年を上回る人の動きがみられる。各地域の人口の大きさを加味しない単純平均で見ると、昨年より5%余り人の移動が増えている。
今後の中国経済はどうなるであろうか。
2003年のSARSの流行のときは中国経済はまさしくV字回復し、年間を通してみればGDP成長率10%と前年を上回ったが、今回はさすがにそうはいかないだろう。SARSの時は感染者数が5000人余りであったのに対して新型肺炎は8万人以上と格段に多いことに加え、中国経済のサービス化が進んでいることもある。モノの消費であれば、感染が広まっている間は買い控えと作りだめがなされ、終息後にすみやかに挽回することができるが、サービスは作りだめができないため、感染中の買い控えを終息後に挽回できない。
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