シェアリングエコノミーが中国で盛り上がり、日本で盛り上がらない理由
もっとも、最近の東京では空車のタクシーが見つかりやすいので、ライドシェアがあったらいいなと思う場面が少ないことも事実である。しかし、ライドシェアが役立ちそうな場面は日本にも存在する。例えば、大雨や地震で電車が停まり、タクシー乗り場に長蛇の列ができるような時である。
ライドシェアのシステムでは需給に応じて価格が変動するようになっている。地震でJRが運転を停止すれば、ライドシェアに対する需要がぐんと増えるので、ふだんはタクシーで1000円ぐらいの距離でも料金が1万円に跳ね上がるかもしれない。するとその費用を負担してでも移動したい人から順に移動することになる。
「それでは公平じゃない」と思う人も多いだろうが、移動したいというニーズが強い人から移動できるという点では合理的なシステムである。また、価格が上がれば、ライドシェアに登録しているドライバーたちが商機を生かそうと動き出すだろうから、少し待てば価格が下がってくるかもしれない。
もう一つ、日本で残念な展開になったのが民泊である。世界192か国での宿泊を仲介しているというAirbnbや、中国では途家や小猪など、民泊仲介はシェアリングエコノミーを代表する分野として成長している。日本でも2014年にAirbnbが進出して以来、訪日外国人を中心に民泊の利用が静かに広まっていた。
訪日外国人、来て欲しいのか欲しくないのか
しかし、私を含め、一般の日本人はそういう動きにあまり気づいていなかったと思う。日本国民の民泊に対する認知度を一気に高めたのが2017年6月の住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊新法」の制定だった。
この法律は、法案を作った国土交通省の説明によれば、「健全な民泊サービスの普及を図るもの」である。しかし、この法律ができたことでむしろ民泊は許可を得なければできないという認識が一般に広まり、「違法民泊」を告発する報道が多くみられるようになった。
民泊新法は、民泊が一年間に客を受け入れられる日数の上限を180日としているが、「生活環境の悪化」が懸念される場合には、地方自治体の判断で受け入れ日数をもっと制限することを認めている。日本旅館協会はこの規定を利用して民泊への制限を強めるよう地方自治体に陳情を強めた。
その甲斐もあって、2018年6月に民泊新法が施行される時点では、各地での民泊に対する制限が非常に強くなっていた。例えば京都市では民泊が客を泊めていい時期は1月15日から3月15日までの間のみ、仙台市の住宅地では土曜のみ可、軽井沢町では全面禁止となった。
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