シェアリングエコノミーが中国で盛り上がり、日本で盛り上がらない理由
この計画を受けて、政府系シンクタンクの国家情報センターは「シェアリングエコノミー研究センター」を設立し、2017年から毎年報告書を出し始めた。それによれば中国のシェアリングエコノミーの取引額は2016年には3.5兆元(56兆円)、17年には4.9兆元(83兆円)で、それぞれ同年のGDPの4.6%、5.9%に相当する。
ちなみに、日本におけるシェアリングエコノミーの付加価値額は、内閣府の研究会の推計によれば2016年には4700~5250億円で、これは日本のGDPの0.1%程度であった。
中国は取引額、日本は付加価値額なので、同じものを比較しているわけではないし、「シェアリングエコノミー」という概念がカバーする範囲も同じではないとはいえ、シェアリングエコノミーが中国で盛り上がり、日本では盛り上がっていないということはこれらの数字から明らかである。
世界は変えたが日本は変えなかったシェアリング
中国では、以前このコラムで紹介したライドシェアや自転車シェアリングの普及によって、国民の間にシェアリング(共享)という考え方が浸透しつつある。最近ではベンチャー企業が投資家からカネを引き出すために、シェアリングという言葉をいささか乱用しすぎているきらいがあり、キッチンシェア、傘シェア、充電バッテリーシェア、カラオケボックスシェア、トレッドミルシェアなどシェアリングをうたったサービスがいっぱい出ている。
一方、日本ではシェアリングエコノミーに対する国民の認知度はとても低い。先ほど引用した内閣府の調査によれば、日本のシェアリングエコノミーの約半分を占めているのはメルカリなどを介した中古品売買である。これ以外の分野となると、日本ではそもそも存在してさえいないケースが多く、シェアリングを体験したことがない日本人が大半ではないだろうか。
日本でシェアリングエコノミーを紹介した先駆的な本として宮崎康二氏の『シェアリングエコノミー』(日本経済新聞出版社、2015年)があるが、その副題は「Uber, Airbnbが変えた世界」という。私も勉強させていただいた好著であるが、いまこの副題を見ると複雑な気分になる。「ウーバーとAirbnbは世界を変えるのかもしれませんが、残念ながら日本では両者とも封殺され、日本はほとんど変わりませんでしたね」と言いたくなる。
ライドシェアは、わずかに京丹後市丹後町という人口5000人の地域で許されているのみで、それ以外の日本では全面禁止である。中国のライドシェアアプリを介して、日本に住む中国人のドライバーが空港で観光客を拾ったりしたこともあったようだが、そんなささやかな動きであっても、すぐに日本のジャーナリストが嗅ぎつけて警察に取り締まるよう訴えた。
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