QRコードの普及と「おサイフケータイ」の末路
レストランの支払いもテーブルにきたレシートのQRコードを読み込むだけ(広東省広州市) Bobby Yip- REUTERS
<一時は世界的な展開を期待された「おサイフケータイ」が、スマホによる決済手段としてローテクのQRコードに凌駕されつつある。何が悪かったのか>
NTTドコモは今年4月から新たなスマホ決済サービス「d払い」を始めることを発表した。スマホの画面にバーコードやQRコードを表示し、それをお店で読み取ってもらうことで商品の購入代金を支払う仕組みだとのことである。
QRコードを中国のスマホ・マネーから逆輸入
これは以前このコラムで紹介した中国のスマホ・マネー、すなわち「支付宝」(アリペイ)と「微信支付」(ウィーチャットペイ)の仕組みと同じである。日本人は今まで「日本が先進国、中国は後進国」という序列を当然視してきたが、ことスマホ・マネーに関しては中国で成功した技術をドコモが取り入れるという逆の順序となった。
【参考記事】日本の電子マネーが束になってもかなわない、中国スマホ・マネーの規模と利便性
もちろんこれは大いにけっこうなことである。何しろスマホ・マネーの利用額は中国が2016年に1000兆円であるのに対して、日本はSuicaなどあらゆる電子マネーと「おサイフケータイ」を合計しても2015年に4.5兆円。どちらが成功しているかは火を見るよりも明らかであり、成功した者に学ぶのは当然のことである。それにQRコードはもともと日本のデンソーが開発したものだというのだから多少なりとも自尊心が満足させられるではないか。
むしろQRコードへの転換が遅すぎたとさえいえる。それはドコモが「おサイフケータイ」にこだわりすぎたからだと思う。「おサイフケータイ」は、ソニーが開発した非接触型ICカードFeliCaを携帯電話に搭載したもので、そこに例えば交通系ICカードのSuicaだとかクレジット・カードの情報を読み込むことで携帯電話を電子マネーやクレジット・カードとして使える仕組みである。
2004年にドコモがこのサービスを始めた時には世界に先駆けて携帯電話で支払いができる仕組みとして注目された。au、ソフトバンクも「おサイフケータイ」のサービスをはじめ、2000年代後半には日本で販売されていた携帯電話端末のほとんどが「おサイフケータイ」に対応していたと記憶する。
だが、その後「おサイフケータイ」は鳴かず飛ばずだった。2015年秋に東大の学生にアンケートを行ったところ、「おサイフケータイ」をまったく使わないと答えた者が96%だった。
「おサイフケータイ」はほとんど利用されていなかったが、それでもドコモなどは携帯電話メーカーに対して端末にFeliCaを搭載させつづけた。なぜそんなに頑固だったのかはよくわからない。搭載をやめると「おサイフケータイ」の失敗を認めることになり、それは会社の先輩の顔に泥を塗ることになるし、ドコモはFeliCaの会社に出資もしてしまっているから引くに引けなくなって、決断を先送りし続けたということかもしれない。
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