コラム

最近、中国経済のニュースが少ない理由

2016年09月27日(火)16時00分

 鉱工業以外のデータを2015年と2016年上半期とで比べると、投資や消費の伸び率にはそれほど大きな差はないのですが、一つだけ目立つのが不動産開発投資の回復です。2015年には不動産開発投資は前年に比べて1%しか伸びなかったのですが、2016年上半期には6.1%伸びています。

 中国の都市部の新築住宅価格は2014年5~6月から一斉に下がりはじめ、まさにバブル崩壊の様相を見せましたが、2015~2016年に多くの都市で底をうち、2016年の春以降は、主要70都市の8~9割で上昇に転じています。不動産市況の好転によって住宅建設が回復し、それによって鋼材やセメントの生産も増加に転じた、というように工業と不動産業の動きは一応整合しているように見えます。

まだら模様の回復

 ただ、不動産価格の推移を見ると、中国のなかで不動産市況が本格的に好転している地域は一部であることがわかります。中国では2014年春まで全国の都市で新築住宅の価格が上昇しつづけたので2014年3月をバブルのピークと見立て、直近(2016年7月)の新築住宅価格がそれに比べてどれぐらい上昇しているかを示したのが表2です。中国で毎月住宅価格の統計がとられているのは主要70都市ですが、そのなかで2014年3月よりも2016年7月の新築住宅価格が高かったのが20都市、残る50都市では2014年3月よりも低い状況にあります。

 深圳の場合、2014年には住宅価格が下がりましたが、その後持ち直し、結局2016年7月には2014年3月より72%も上がっています。表2に示したように深圳市を含めて10都市で新築住宅価格が2014年3月のピーク時を10%以上上回っていますので、これらの都市では「バブル崩壊」といった状況ではなくて、不動産業はむしろ活況を呈しており、投資が増えているのもこれらの都市においてだと思われます。

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 一方、50都市では新築住宅価格が2014年3月のピーク時の水準を回復していません。つまり、これらの都市ではバブルがつぶれた状態です。中国の報道によれば統計の対象にならないより小さな都市では不動産バブルの崩壊がいっそう深刻だそうです。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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