コラム

中国の旅行会社が「新シルクロード」に日本メディアを招待した理由

2017年04月18日(火)16時03分

食事も印象的だった。日本ではなぜか西安イコール刀削麺というイメージがあるようだが、刀削麺は山西省の料理である。西安というと、中国風ハンバーガーとでもいうべき羊肉泡饃がよく知られている。これは小麦粉で作られたパンをちぎって、羊肉のスープにつけて、すいとんのようにして食べるという料理だ。中国では有名だが、日本で食べられるところはそう多くはない。

この料理の醍醐味はパンを自分でちぎるところにある。細かくちぎればちぎるだけおいしくなるのだとか。だが、正直酒の入った宴席でそんなに細かくちぎるのは面倒くさい。というわけでついつい大きくしてしまうのだが、「そんなことでいけません」と怒られてしまうこともある。まるで頑固親父のラーメン屋のようだ(笑)。

lee170418-7.jpg

このように細かくちぎっていき...(写真:土居悦子)

lee170418-8.jpg

すいとんのようにして食べる(写真:土居悦子)

他にも西安のハラル・レストラン(イスラム教の戒律に則ったレストラン)では、馬の尻尾の煮込みなど、珍しい料理に舌鼓を打った。餃子専門店では西太后が食べたという餃子宴席を堪能した。なんと16種類もの餃子が出てくるのだ。さまざまな味の餃子はいくら食べても飽きることがない。

日本人は中華料理と大まとめに言うが、中国はともかく広大だ。その地方地方に根ざした特有の料理が存在する。そうした地方料理を楽しむのも旅行の楽しみだ。日本の国内旅行がそうであるように、中国に旅行する時もその地方特有の料理を楽しんでもらいたい。

中国では旅行がブーム、国内旅行も増えている

とまあ、このように無邪気に旅行者気分で楽しんできた。もちろんジャーナリストとしての観察も忘れなかった(この「観察」については別の機会に記したい)が、なにせ招待してくれた中国側の要求が日本人旅行者の目線から改善点を指摘してほしいということなのだから、無邪気に遊ぶのも仕事である。

個人的には、中国の観光地が洗練されつつあると強く感じた。考えてみれば、ここ数年は中国では旅行ブームとなっている。中国人による訪日旅行や爆買いが話題となったが、それ以上の人々が中国国内を旅行しているのだ。彼らを楽しませるための投資や工夫が行われているのも当たり前の話だ。

【参考記事】大人気の台湾旅行、日本人が知らない残念な話
【参考記事】美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ足りないもの

その結果として、中国の観光地は驚くべきレベルアップを果たしている。「西安は一度行ったことがあるからもう十分だ」と思っている人は考え直したほうがいい。中国の急成長は経済だけではない。観光地もまた驚くべき変化を遂げているのだ。

残念ながら、この情報はまだ日本にはあまり伝わっていないようで、ツアー中は日本人に会う機会はほとんどなかった。日本から数時間の距離にこれほどの観光地があることを、日本文化のルーツがあることをぜひ知ってほしい。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、横浜本社ビルを970億円で売却 リースバック

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

衣料通販ザランド、第3四半期の流通総額増加 独サッ

ビジネス

ノジマ、グループ本社機能を品川に移転
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story