コラム

現代の国家の安全を守るカギ...「海洋インフラ」の重要性と、勝利に不可欠な「非キネティック能力」とは

2024年04月27日(土)16時51分

石油輸入で中東に依存する日本にも多大な影響が

米財務省は、イランのイスラム革命防衛隊の電子部門司令部のイラン人幹部6人に対する制裁を発表した。イランは現在、重要インフラ(特にイスラエルを支持しているとみなされている国々)を攻撃するためにサイバー工作を実施する可能性がかなり高い。そうなると、中東地域でのサイバー攻撃に起因する混乱が、中東地域に石油の輸入で依存する日本にも多大なる影響を及ぼすことになる。

サイファーマ社の分析では、海底ケーブルには物理的な脅威だけでなく、サイバー攻撃やネットワーク攻撃のリスクが常に存在するので注意が必要だ。攻撃者は、民間企業がケーブルを通過するデータ通信を管理するために使用しているネットワーク管理システムをハッキングすることで、世界のデータの流れを混乱させることができる。

悪夢のシナリオは、ハッカーらがネットワーク管理システムのコントロール権つまり管理者権限を奪うことである。データ通信網が混乱し、「キル・クリック」(データ伝送を完全に遮断すること)を実行する可能性さえある。妨害工作やスパイの可能性は極めて明白であり、報道によれば、多くのネットワーク管理システムのセキュリティは最新ではないと言われている。

日本も世界も、もっと海底ケーブルの安全に注目すべきではないだろうか。

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プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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