コラム

サイバー攻撃の標的となる各組織の「隙」が、ダークウェブの「地下フォーラム」で情報交換されている

2023年11月25日(土)20時05分

ところがサイバー攻撃者を食い止めるには、さらなる対策が不可欠だ。なぜなら、攻撃者は常に新しい攻撃手法を使っており、攻撃側の能力も向上しているからだ。実は、攻撃に使われる可能性がある脆弱性は日常的に次々と発見される。そうなると、攻撃者目線で、自分たちのシステムにどんな新たな脆弱性があるのかを常時、把握しなければならない。

攻撃者は、標的のシステムに侵入するために、設定ミスでできた穴を探し、未知の脆弱性を突くような新しい攻撃ツールを探している。最近行った調査でも、いくつものランサムウェア攻撃を実施するグループが、ダークウェブの地下フォーラムで「ゼロデイ脆弱性(まだ知られていないセキュリティの脆弱性)」を積極的に探していることを突き止めている。

必要な対策「脅威インテリジェンス」をさらに拡充

そうした脅威に対処するために必要な対策は、私がこのコラムでも触れてきた「脅威インテリジェンス」だ。脅威インテリジェンスはサイバー攻撃につながるリスクなどについて「インテリジェンス」を把握する対策であり、サイバー空間における「スパイ活動」とも言えるものだ。

だが、脅威インテリジェンス自体もそろそろ再定義が必要ではないかと感じている。英MI6でサイバー部門を率いてきた私はこれまで、どう日本や世界のセキュリティ環境の改善に貢献できるのかを考えてきた。そこで私が開発したのが、ASMと脅威インテリジェンスを合わせた上で、それをさらに拡充する、ETLM(External Threat Landscape Management=外部脅威情勢管理プラットフォーム)というモデルだ。

巷で起きているサイバー攻撃のトレンドから、攻撃者の情報や攻撃実績、攻撃戦略などについても徹底した情報収集を行う。自社のブランドが悪用されていないかを調べたり、ダークウェブでやりとりされる組織の認証情報などもすべて把握するシステムである。そして「ニューロ・センター(中枢)」で全てを管理する。

このニューロ・センターという新しいアプローチについては、11月28日に開催される「セキュリティマネジメントSummit 2023 Winter」でオンライン解説する予定だ。特に自社にとって本当に必要な対策はどんなものなのか頭を悩ませている関係者にはぜひ見ていただきたいと思う。

攻撃者の進化とともに、防御側も継続的に進化し続けなければいけない。さもないと、取り返しのつかないサイバー攻撃の被害に遭ってしまう可能性があるからだ。被害を受ければ、損失など実害のみならず、組織の評判も落とすことになる。セキュリティの意識も進化していく必要があるのだ。

【告知】11月28日(13:45~14:15)「セキュリティマネジメントSummit 2023 Winter」で、サイファーマ社が「脅威インテリジェンスを再定義」という題目でオンライン講演を行う。オンライン(LIVE配信型 WEBセミナーそこでこの「ニューロ・センター」という新しいアプローチについての解説をするのでぜひ参加(https://www.cyfirma.com/jp/news/securitymanagementsummit_2023/)いただきたい。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story