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埒が明かない学歴詐称問題...相互に関連し合い、一貫性もある「留学記録」を議論の出発点に
この人物こそ、イギリス犯罪機会論の権威、アンソニー・ボトムズ教授その人である。
こうして、犯罪機会論を全く知らなかった私の前に、突如として巨大な、しかし魅力的な研究領域が出現し、その扉が開かれた。
あのころ、私の英語のリスニング力がもっと高かったら、今の私はなかったかもしれない(以下略)。
こうして入学すると、「コースブック(通称ブルーブック)」と呼ばれる分厚いファイルを渡された。授業のすべてがここに詰まっているという。
コースブックをめくると、例えば、春学期の時間割を見つけることができる。
このように、月曜から金曜の朝から晩まで、犯罪学(心理学、社会学、精神医学、法学)の授業がズラッと並んでいた。
また、コースブックをめくると秋学期のフィールドワークのスケジュールも書かれている。刑務所を訪問して受刑者とディスカッションするものが多い。筆者も刑務所のフィールドワークに参加した。
さらにスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)のフィールドワークでは、一般には公開されていないブラック・ミュージアム(黒博物館)も見学した。犯行に使われた凶器が展示されているが、中でも被害者の頭部を煮るのに使った鍋にはショックを受けた。
ちなみにイギリスでは犯罪学科を設置している大学は多く、アメリカには犯罪学の単科大学もある。ところが、日本には犯罪学科を擁する大学は一つもなく、犯罪学を学べる大学もほんのわずかしかない。
閑話休題。ケンブリッジの成績は毎学期のエッセイ(小論文)と学年末の学位論文で決まり、その提出スケジュールもコースブックにある。
紆余曲折がありながらもどうにか修了にたどり着いたので、次のような成績証明書が発行された。
手前みそになって恐縮だが、この成績証明書に関して指導教授のボトムズ先生が推薦状を書いてくれた。それによると、76点だった学位論文は、犯罪学研究科の大学院生46人中のトップ6に入ったことを意味するという。
なお、学位論文の採点者は学外の犯罪学者(氏名は非公開)なので、採点の客観性が担保されている。
さらに推薦状にあるように、学位論文をベースにしてイギリス犯罪学会の学会誌に投稿するよう強く勧められた。そのため鋭意取り組むことに。結局5年を要しはしたが、「日本の低犯罪率の文化的考察」として世に出すことができた。
この論文はボトムズ先生の予想通り、世界中の多くの研究者の関心を集め、論文の引用数は100編を超えた。最近出版された恩師ファーリントン先生(ケンブリッジで調査法を教えていただいた)らによる『日本の犯罪』にも、この論文が引用されている。
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