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ブレグジット期限だったのに何も決まらず!──イギリス政治に何が起こっているのか?
「国民の声=民主主義の発露」は無視できない
これまでの動議と採決結果を見ただけではわかりにくいが、英政界には暗黙の了解事項がある。「国民投票で決定された、離脱という決定に反対する姿勢を取らないこと」である。離脱は「国民の声」であり、民主主義社会の英国では、これを無視することはできない。
2016年の国民投票はその結果に法律的拘束力がなく、「xx%」以上の支持があった側を「勝利者」とするという取り決めはなかった。そこで、総選挙時のように、1票でも多く得票したほうを勝ちとする小選挙区制の手法を採用し、結果は51.9%(離脱派)対48.1%(残留派)という僅差であったけれども「離脱側の勝利」となった。ここから離脱実行が英国政界の当然の任務となり、国民もこれを期待した。
英国の外にいる人からすれば、海を隔てた隣国となるEU諸国との縁を切ることにどんな利点があるのかといぶかしく思うに違いない。過去46年間にわたる司法、通商、安全保障、運輸、雇用などありとあらゆる範囲での協力体制に一線を画すことによって、経済及び社会的に大きな打撃が発生するのではないか、と。国際政治の面から言っても、「英国第1主義」は内向きの発想である。「孤立する英国」と評されても仕方ない。
離脱をすれば経済的に大きなダメージがあるだろうことは、国際通貨基金(IMF)も、イングランド中銀も指摘してきた。それでも、「国民が離脱を選択した」という事実は大きい。
英政界は離脱することを前提として動いており、「離脱による損害をいかに最少のものにするか」に力がそそがれている。
それにしても、なぜ議会内の意見がバラバラなのか。
まず、全体像を見てみよう。
離脱が決定したものの、下院議員の大部分は残留支持派だった。特に残留支持度が高い労働党議員の中には、自分の選挙区(例えばイングランド地方北部)は離脱を選んだのに、自分は残留支持という「ねじれ現象」が多々発生した。残留派議員は良心の呵責(離脱によって有権者の生活が悪化するかもしれないことを知りながら、離脱を実行する自分に対する呵責)にかられることになった。
「離脱という国民の選択を実行する」ことが了解事項であるから、2015年5月の総選挙では、80%以上の政党が離脱実行を公約に入れた。2大政党制の英国で、保守党と労働党が同時に離脱実行を確約したことで、残留に票を投じた人は選択肢を奪われた。
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