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自民善戦、立民惨敗、維新躍進の総選挙を構造分析する
衆院選の当選者にバラを付ける自民党の岸田首相と高市政調会長(10月31日) REUTERS--Behrouz Mehri/Pool
<今回の総選挙は総じて「自民善戦、立民惨敗、維新躍進」という結果に終わった。なぜ自民は予想に反して15議席減で踏みとどまれたのか。立憲民主党の共産党との共闘は本当に失敗だったか。日本維新の会の議席増は今後も続くのか――衆院選で起きた「異変」のメカニズムを読み解く>
10月31日に投開票が行われた総選挙は、自公連立政権が実質的に勝利し、野党共闘を組んだ立憲民主党と共産党が敗北、日本維新の会が躍進する結果に終わった。メディアによる事前予測では「自民党が単独過半数233議席を割るかどうか」という見立てが有力だったが、蓋を開けてみれば自民党は絶対安定多数を維持できる261議席を単独で獲得(追加公認2人を含む)。公示前と比べて3議席増となった公明党とあわせて、全465議席中293議席を与党が維持した。
これに対して立憲民主党は13議席減の96議席、共産党は2議席減の10議席に留まり、社民党、れいわ新選組と合わせた4党による野党共闘は合計110議席に低迷、政権交代には程遠い結果となった。
自民党は公示前と比べて15議席を失ったが、その内訳を見ると小選挙区で21議席を減らした代わりに比例で6議席増になっている。今回の総選挙では大阪で維新旋風が吹き荒れたが、大阪の自民党候補者15人全員が維新に敗北(うち2人は比例復活)した事情を考えると、全体として「差し引きで15減」という結果は想定を超える「善戦」だと言える。
そのメカニズムはおそらくこういうことだろう。まず客観的情勢として、コロナ感染確認者が全国で229人(10月31日)と激減し、緊急事態宣言が解除され飲食店への時短要請も各地で解除される中で、政権によるコロナ禍対策への「直接的な批判と不満」がある程度、和らいでいた(菅政権後期とは事情が異なる)。選挙戦ではコロナ禍対策と経済対策が中心的な争点であったが、例えばかつての郵政選挙のように、有権者が熱狂するような中心的争点が形成された訳ではなく、投票率は戦後3番目に低い55.93%だった。コロナ禍で生活に追われる有権者を振り向かせるほどの熱量が生まれたとは言い難い。
その中で、岸田首相による短期決戦の仕掛けに対して急遽具体化が進んだ野党共闘は、213選挙区(無所属候補者等も含めると217選挙区)で候補者一本化を果たす「形」を整えた。しかし問題はそこから先で、共産党による「限定的な閣外協力」という政策合意の将来像を共有できないまま、一部には共産アレルギーを抱える立民コア支持層の躊躇と混乱を抱えた状態で野党共闘は選挙戦に突入することになった。これまでの人的関係構築の濃淡などによって結果は分かれ、野党共闘が奏功し自民候補に大差をつけた選挙区(典型は東京8区)もあれば、激しい接戦となった選挙区(北海道4区など)もあったが、全ての選挙区でそうなった訳ではない。与野党対決の二者択一型選挙区は全国で140以上にのぼったが、実に「2対1」の割合で与党候補が勝利を収め、野党共闘は敗北している。
与党が多くの接戦区で議席を保ったのは、自公両党による伝統的な組織戦が本領を発揮したからだろう。党選対本部による幹部の応援演説投入の時機と場所選定の巧みさと相俟って、接戦を与党候補が制することに成功したり、あるいは僅差で敗北しても比例復活の道を保つことになったりして、与党の議席数を押し上げたのだ。
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