コラム

英防衛メーカーが砲弾生産を「16倍に増産」で起きること...「戦時体制」ロシアへの備えの本気度

2025年04月22日(火)20時17分
英BAEシステムズが砲弾生産を大幅拡大

BAEシステムズ工場の生産ライン(2011年6月) Phil Noble-Reuters 

<英国を代表する防衛メーカー「BAEシステムズ」が、爆薬生産能力を大幅に拡大するとの情報。敵国による攻撃を想定して新生産拠点は3つに分散 するという>

[ロンドン発]ウクライナ戦争を巡り第2次トランプ政権の脱欧州政策が進む中、英国を代表する防衛メーカー、BAEシステムズは北大西洋条約機構(NATO)標準弾薬の155ミリメートル砲弾の生産を今後2年間で16倍に増産する計画だと英紙タイムズ(4月20日付)が報じた。

同紙によると、英国は米国とフランスへの弾薬依存をなくすため爆薬生産能力を大幅に拡大する。英陸軍の155ミリメートル砲弾や他の武器に使用される爆薬RDX(トリメチレントリニトロアミン)を生産するため英国の拠点に「輸送コンテナ工場」を設置する。

BAEシステムズは敵国の攻撃を受けた場合を想定して新しい生産拠点を3つに分散させることを検討中だ。ドナルド・トランプ米大統領の下で米国は欧州にとって信頼できないパートナーになる中、英国と欧州は米国製装備品への依存度を減らす動きを早めている。

米国の国際武器取引規制(ITAR)への懸念

BAEシステムズはこれまで米国とフランスの供給元からRDXを輸入してきた。しかし米国製爆薬を使用した武器弾薬は米国の国際武器取引規制(ITAR)の対象になり、米国が将来、使用・販売を禁止する恐れがある。このため世界初の自動化技術を活用して自国生産に切り替える。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story