コラム

「反ユダヤ」は暴発寸前だった...アムステルダム、サッカーファン襲撃事件の背後で起きていたこと

2024年11月09日(土)15時37分

UEFAは試合中の政治的発言・横断幕を禁止

11月5日、パリで行われたUEFAチャンピオンズリーグのパリ・サンジェルマン(PSG)対アトレティコ・マドリード戦ではキックオフ前にPSGサポーターが「フリー・パレスチナ」「ガザの子どもの命は他の子どもより軽いのか」と書かれた50メートルの横断幕を掲げた。

イスタンブールの名門クラブ、フェネルバフチェSKのサポーターも7日、国内リーグの試合中に「フリー・パレスチナ」と書かれた横断幕を広げ、パレスチナに連帯するスローガンを唱えた。トルコのサッカー選手やサポーターはこれまでにもパレスチナ支援を表明している。

サポーターの感情が激しやすいサッカーの試合は、ユーゴスラビア紛争で民族間の嫌悪や敵対を煽る場として使われた。UEFAはサッカーの中立性を堅持し、政治とサッカーを切り離すことに努めている。試合中の政治的発言・ジェスチャー・横断幕を禁止している。

欧州では政治の右傾化が進み、イスラム系移民との軋轢が大きくなっている。露骨にイスラエルに肩入れするトランプ氏復活でイスラム系移民のフラストレーションがさらに増幅するのは必至だ。欧州が抱える爆弾はいつ炸裂してもおかしくない。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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