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デンマーク首相が路上で殴られる...「気に入らない政治家」への襲撃が相次ぐ欧州で何が起きている?
デンマークのフレデリクセン首相(2024年5月) Sergii Kharchenko via Reuters Connect
<コペンハーゲンの路上でフレデリクセン首相が襲われた。スロバキアやドイツなど、欧州各国で襲撃事件が続く背景に何があるのか>
[ロンドン発]スロバキアの首都ブラチスラバ北東で5月15日、ロベルト・フィツォ首相が拳銃で銃撃されたのに続いて6月7日、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相がコペンハーゲンの路上で襲われた。欧州連合(EU)欧州議会選(6月6~9日)の最中だけに緊張が高まる。
コペンハーゲン警察はX(旧ツイッター)に「7日夕、コペンハーゲンで首相が事件に巻き込まれた。1人が逮捕され、現在捜査中だ。現時点でこれ以上のコメントや発言はない」と投稿した。目撃者は地元メディアに「フレデリクセン首相に目立ったケガはなかった」と証言している。
デンマークでは6月9日に欧州議会選の投票が行われる。フレデリクセン首相はデンマーク政界で圧倒的な存在感を示しており、次期EU大統領(首脳会議常任議長)の呼び声も高い。中道政治が弱体化し、保守とリベラルの二極化が進む中、欧州各地で政治テロが相次ぐ。
極右政党の支持者は「今や完全に抑制を失った」
5月3日には、欧州議会選に立候補しているドイツ社会民主党(SPD)のマティアス・エッケ議員(現職)が独東部ザクセン州ドレスデンで若者4人から暴行を受け、手術を要する重傷を負った。同月5日に17歳の少年が「自分がSPDの政治家を刺した」と出頭した。
SPDは声明で極右政党「ドイツのための選択肢」について「彼らの支持者は今や完全に抑制を失っており、私たちSPDを格好の標的とみなしているようだ」と非難した。ドイツ再統一で産業空洞化が進むザクセン州は「ドイツのための選択肢」の主要地盤の一つだ。
6月4日には独南西部マンハイムで「ドイツのための選択肢」の政治家がカッターナイフで男に刺された。SPDを率いるオラフ・ショルツ独首相は「民主主義はこのような行為によって脅かされている。『対立の政治』の空気や言説から生じている」と述べた。
地雷原をさまよう欧州政治
ドイツでは昨年「ドイツのための選択肢」議員への暴力的な攻撃は86件にのぼった。左翼過激主義を支持する加害者が多かった。90年連合・緑の党議員に対する暴力的な攻撃も62件起きている。インフレ、ウクライナ戦争、ガザ戦争で欧州政治は地雷原の中をさまよう。
フレデリクセン首相に対する襲撃事件について、欧州議会のロベルタ・メツォラ議長はXへの投稿で「今夜のデンマーク首相に対する攻撃は衝撃的だ。政治に暴力は存在すべきではない。強くあれ、メッテ!」と呼びかけた。