コラム

イギリス史上最悪の首相? あのお馬鹿な「最短命」首相が、政治の表舞台に戻ってきた

2023年09月20日(水)17時48分

万引きが前年比37%も激増

エネルギー・生活費の危機で英国では万引きが前年比37%も激増。英紙デーリー・テレグラフは「食べ物を買う余裕のない人たちから注文を受けて盗みに入るプロまであらゆる種類の犯罪が起きている」と店員の眼の前で酒、菓子、剃刀、コーヒー、肉など転売価値のあるものなら何でも持ち去られる様子を伝える。NHSの待機患者数は過去最悪の768万人に達した。

世論調査会社Ipsosが7月19~23日に実施したポリティカル・モニターでマーガレット・サッチャー以降の歴代首相が英国を良くしたか、悪くしたかを尋ねている。72%がトラス氏は英国を悪くしたと答え、良くしたと答えたのはわずか5%だった。62%がジョンソン氏は英国を悪くしたと回答、25%が良くしたと答えた。

英国を良くした首相ランキングは以下の通りだ。
(1) サッチャー46%(悪くしたとの回答は37%)
(2) トニー・ブレア42%(同36%)
(3) キャメロン29%(同45%)
(4) ゴードン・ブラウン28%(同33%)
(5) ジョン・メージャー26%(同19%)
(6) ジョンソン25%(同62%)
(7) メイ21%(同49%)
(8) トラス5%(同72%)

英中銀・イングランド銀行元総裁のマーク・カーニー氏は「民間部門での経験がほとんどなく、自由市場主義者の仮面をかぶった政治家人生を送ってきた人々は強い経済にとって使命、制度、規律の重要性を著しく過小評価している。極端な保守派には経済を動かすものに対する根本的な誤解がある」と厳しい。

総裁在任中、保守党の強硬離脱派から激しい攻撃を受けたカーニー氏は「EU離脱派は英国を『テムズ川のシンガポール(規制緩和で成功した国家)』にするという夢を達成するどころか、トラス政権は『英仏海峡のアルゼンチン(財政破綻した国家)』を実現した」と、脱炭素化経済への移行の妨げになりかねないトラス氏の主張を一蹴した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story