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「プリゴジンの反乱」を抑えられなかったプーチン...国民に「弱くて無能」な姿が露見した指導者に迫るメルトダウン
プーチンは情報機関・治安組織・軍の国粋主義者(シロビキ)、資源に群がるオリガルヒ(新興財閥)、メディアを対立させ、自らが調整役となることで権力を維持してきた。プリゴジンとワグネルはシロビキの中でも特に国防省・軍を牽制するジョーカーとして重宝してきた。しかしプリゴジンのノンエリート的なレトリックが鼻持ちならなくなってきた。
23日の投稿でプリゴジンは「ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)がロシアを攻撃しようとしているという特別軍事作戦の大義はすべて嘘であり、国民と大統領を欺く口実に過ぎない」とショイグらを非難する一方で、初めてプーチンが唱える「特別軍事作戦の大義」を否定した。ワグネルをショイグに取り上げられ、攻撃されたことに逆上したのか。
ノンエリートのレトリックを操って人気を集めるプリゴジン
ロシアの独立系世論調査機関レバダセンターによると、政治家別の支持率(5月23日)はプーチンが前月より2%アップの42%。ミハイル・ミシュスチン首相が3%アップの18%。セルゲイ・ラブロフ外相が14%、ショイグが1%ダウンの10%。プリゴジンは3%アップの4%と初めてトップ10入りを果たした。
ミシュスチンも、ラブロフも、ショイグもプーチンの忠実な下僕で、政敵にはなり得ない。来年3月の大統領選に当選して事実上の終身大統領を目指すプーチンにとって、東部ドネツク州の激戦地バフムートを制圧し、テレグラムなどを通じてノンエリート層の怒りを煽って人気を集めるプリゴジンは無視できない存在になってきた。
調整役もルカシェンコに持っていかれたプーチンはロシア国民の目に「弱くて無能な指導者」に映り始めた。プーチンは「われわれが直面しているのはまさに裏切りだ」と危機感をあらわにした24日の演説に続く26日の国民向け演説で「国民の連帯は、いかなる恐喝も、内部混乱を引き起こそうとする試みも失敗する運命にあることを示している」と強弁した。
「武力反乱はいかなる場合も鎮圧されていたはずだ。反乱の組織者たちは国や国民だけでなく、犯罪に引きずり込んだ仲間をも裏切った。キーウのネオナチ、西側の後援者たち、すべての国家反逆者たちはロシア兵が互いに殺しあうこと、最終的にロシアが負けること、われわれの社会が分裂し、血なまぐさい内部闘争に陥ることを望んだ」と罵った。