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寒さと飢えで亡くなる人も...値上げと不況にあえぐ英国、過去10年で最大のストも発生
英イングランド北西部ランカシャー州で暮らすバーバラ・ボルトンさん(87)は昨年12月11日、低体温症と胸部感染症と診断されて入院した。容体は悪化の一途をたどり、終末期医療を受けることになったが、1月5日に息を引き取った。主治医は「彼女の死は特に低体温症によって加速した。暖房がないためセルフネグレクトに陥った恐れがある」と指摘した。
バーバラさんは最近まで大手スーパーの薬局で働いていたが、生活費の危機で暖房を入れる余裕がないと漏らしていた。体の中心部の体温が35度を下回ると、意識・判断能力が低下する。食品価格も高騰している。ストを構えている教職員や国家医療サービス(NHS)の看護師の中には無料で食品を配るフードバンクに駆け込む人もいるほどの窮状だ。
この1年で牛乳50%、砂糖43%の値上げ
英国家統計局(ONS)によると、消費者物価指数(CPI)は昨年12月までの1年間で10.5%(前月は10.7%)も上昇した。持ち家の住宅費を含めたCPIHは9.2%の上昇(同9.3%)だ。CPIでは住宅関連サービス費が26.6%の上昇、食品・非アルコール飲料が16.8%、レストラン・ホテルが11.3%となっている。
牛乳、卵、ドッグフードの価格が急上昇し、小売り分析会社カンターによると、年間の平均食品買い物代金は788ポンド(約12万5500円)増の5504ポンド(約87万6500円)になる。ONSによると、この1年間の値上げ幅は牛乳50%、グラニュー糖43%、チェダーチーズ33%、卵30%、食パン21%だった。
労組発表ではストに参加した教職員は30万人。学校・カレッジ指導者協会が948校を対象に実施した調査では97%の学校で少なくとも一部の教職員がストに突入しており、授業が支障なく行われたのはわずか11%。80%は部分的に閉鎖され、9%は完全に閉鎖・休校になっている。政府発表でも公立高校の51.7%が部分的に閉鎖・休校する大混乱に陥った。
世論調査では学校閉鎖や休校に対処しなければならない父母の58%が教職員のストを支持している。また父母の51%が「教職員の給与は安い」とみている。全体では25%が教職員のストを強く支持しており、実に50%がスト支持派だった。しかしストによる混乱で最大野党・労働党の支持基盤である労組への不満が強まるのを待つのが与党・保守党の作戦だ。
リシ・スナク首相は下院答弁で「教職員には新任教職員に対する9%の賃上げと教職員のトレーニング、能力開発への投資を含めて、この30年で高い賃上げを行っている。子供たちの教育は重要であり、今日、教職員はストに参加せずに学校にいるのが当然だ」とスト参加者や労組を批判した。