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女性専用サービスを「女性以外」から守れ! 性別変更の簡易化改革をハリポタ作者が批判(スコットランド)
自らも家庭内暴力や性的暴行のサバイバー(生存者)だと公表したローリング氏は「もし自分は女性だと信じたり感じたりしている男性に、手術もホルモン治療もなしに性別変更を認め、女性のトイレや更衣室の扉を開いたら、中に入りたいと望む全ての男を招き入れるのと同じことになる」と唱え、声なき多くの女性から賛同を得たと主張してきた。
日本の国会図書館の調査では、英国も欧州主要国と同じように法的性別変更の年齢要件を成年年齢の18 歳と一致させてきた。04 年の性別認定法では、申請者に配偶者やシビルパートナーがいる場合、性別認定委員会は暫定的な性別認定証書を交付し、完全な性別認定証書を得るためには婚姻やシビルパートナーシップを解消する必要があった。
法的性別変更の要件は厳格過ぎるのか
13 年の同性婚法で、配偶者がいる場合、配偶者が婚姻の継続に同意すれば完全な性別認定証書が交付されるようになった。シビルパートナーがいる場合、両当事者が法的性別変更を申請する必要があった。しかし19 年の制度改正で、相手方の同意があればシビルパートナーシップを継続したまま完全な性別認定証書が交付されるようになった。
英国で性別認定証明書を取得するためには、申請者は、専門医による性別違和の医学的診断と性別変更のために受けた治療の詳細を記載した2つの診断書を提出した上、少なくとも2年間は獲得した性で生活し、死ぬまで獲得した性で生きるつもりであるとの法的な宣言をしなければならない。
こうした要件に対する英国政府のコンサルテーションの結果、トランスジェンダーの64%が性別違和の診断を義務付けるべきではないと答え、80%が治療の詳細を記した診断書提出の撤廃を訴えた。欧州連合(EU)の行政執行機関、欧州委員会は20年に英国は国際人権基準から遅れを取っているとして5つのクラスターの下から2番目に位置付けている。
英国の手続きは官僚主義的で時間も費用もかかるとの批判を受け、スタージョン氏率いるスコットランド民族党(SNP)と緑の党が過半数を占めるスコットランド議会は昨年12月、申請者は性別違和の診断や治療の医学的証拠を提出しなくて済む改革案を86票対39票の圧倒的多数で承認した。法的に性別を変更できる最低年齢も18歳から16歳に引き下げる。
世論は激しく揺れ動いている。昨年1月に行われた英BBC放送のスコットランド世論調査では57%が法的性別変更をしやすくする改革に賛成し、反対の声はわずか20%だった。しかし獲得した性で暮らす期間を2年から半年に短縮するのは賛成37%、反対44%と賛否が逆転し、最低年齢を18歳から16歳に引き下げるのも賛成31%、反対53%と慎重論が多かった。