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ドイツが「脱原発」を延期...ドイツにも解けない「脱原発・脱石炭・脱ロシア」の難題
ドイツ・エムスランド原発(2022年10月) Stephane Nitschke-Reuters
<独ショルツ首相が「原発3基の稼働延長」を表明。IEAは「50年までのネットゼロ達成には原発を倍増する必要がある」としている>
[ロンドン発]ドイツのオラフ・ショルツ首相は10月17日、ロシアのウクライナ侵攻で悪化したエネルギー危機を緩和するため、ドイツに残る3基の原子力発電所を来年4月中旬まで稼働させるよう関係閣僚に書簡で伝えた。2011年の東日本大震災による福島原発事故で「脱原発」に改めて舵を切ったドイツは今年末までに3基すべてを廃止する計画だった。
ショルツ氏は「イザール2、ネッカーヴェストハイム2、エムスランドの原発3基を今年12月31日以降、来年4月15日まで稼働できるよう法的根拠をつくる」と伝えた。3党連立のショルツ政権内では自由民主党(FDP)が2024年春まで3基を稼働させることを、緑の党はイザール2、ネッカーヴェストハイム2を必要に応じて運転することを求めていた。
原子力はドイツの電力の6%を供給する。経済を最重視するFDP党首クリスティアン・リントナー財務相は「この冬、すべてのエネルギー生産能力を維持することはわが国とその経済にとって極めて重要だ」とシュルツ氏の決定を歓迎した。独エネルギー大手、 RWE は「現在のエネルギー危機において理解できる政治的決定だ」と稼働延長の準備を始めた。
緑の党のシュテフィ・レムケ環境相は「明確になったのは、脱原発は継続されるということだ。ドイツは来年4月15日についに原発を廃止する。寿命の延長や新しい燃料棒の導入もない」とツイートした。しかし緑の党の議会グループは「エムスランドは送電網の安定に必要ない」と「脱原発」に向けて少しでも前進することへのこだわりをにじませた。
欧州向けロシア産天然ガスは84%減
バルト海の海底を通る天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」でロシアと直結するドイツはウクライナ戦争とそれに伴う経済制裁の逆風をまともに受ける。ロシアの侵攻前、ドイツはガス需要の55%をロシアに依存していたが、ノルウェーやオランダの天然ガス、米国やカタールの液化天然ガス(LNG)に切り替え、ロシア依存度を4分の1程度に押し下げた。
露国営ガス大手ガスプロムはベラルーシ、ポーランド経由のヤマルパイプラインの供給も閉めた。ノルドストリーム1はかつて1日最大1億7000万立方メートル(約1760GWh相当)の天然ガスを送り、ノルドストリーム2が承認されていれば供給量は倍増するはずだった。しかし残るノルドストリーム1も「タービン補修」「ガス漏れ」を理由に完全に止められた。