コラム

「欧州で最も危険な女」ジョルジャ・メローニとは? イタリア初の女性首相誕生へ

2022年09月23日(金)14時10分

「『イタリアの同胞』は極右政党ではなく、イタリアの愛国者の政党です。メローニがイタリア初の女性首相になったら、自分の考えやプログラムをすべて実行に移すことを期待しています。なぜなら彼女のプログラムは現実的なものと実現可能なもので構成された具体的なものだからです」

「政治は長年、若者の面倒を見てこなかった」

「メローニ大統領」とプリントされた青いTシャツを身に着けた男性は「選挙に勝つことが最も重要です。メディアに『極右』と呼ばれることを残念に思います。われわれは極右を羨望することはありません。メローニは間違いなくイタリア初の女性首相になります。メローニならイタリアが陥っている下向きスパイラルを上向きに変えることができます」と熱っぽく語った。

220923kmr_irp03.jpg

「メローニ大統領」とプリントされたTシャツを着た男性陣(同)

サルビーニ氏を支持するルーマニア出身のドイナさん(68)は50年前、イタリア人家族の養子として迎えられた。「サルビーニを支持する理由は私や多くのイタリア人の要求に応えてくれるからです。家族、学校、福祉、移民規制、パーマネントな仕事と未来を実現してほしい」と訴えた。移民規制の強化はもはや右派政策のスタンダードと化している。

16歳のガブリエル君は「イタリアの政治は年々悪化している。今は新しい政党がどんどん出てきています。新興勢力の『イタリアの同胞』が上手くいくことを期待しています。若者が政治にほとんど関心を示さないのは、長年にわたって政治が若者たちの面倒を見てこなかったからだと思います」と語る。

「イタリア政治への不安はだんだん膨らんでいます。私たち若者は本当に大変な思いをしています。学校と仕事の両面でもっと配慮してほしいと切に願います。私も成人したら、家を探したり、仕事をしたり、そういうことが問題になりそうです。この国では30年も前から若者のために作られた政策がありません。若者のための政治に取り組んでほしい」と訴えた。

極右に侵食される左派地盤

今年はベニート・ムッソリーニ率いるファシスト党員と民兵組織4万人余がローマに進軍し、国王から組閣の命を受け無血クーデターに成功、ファシズム時代の扉を開いた「ローマ進軍」から100年に当たる。メローニ氏は労働者階級が住むローマ南部の左派地盤に生まれ、子供の頃、祖父に手を引かれ市場の屋台に並んだ。左派地盤は押し並べて右派に侵食されている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story