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「プーチンの頭脳」爆殺の意味 ロシア内部崩壊の予兆か、「非人道」兵器使用の口実作りか?
「ドゥーギン氏の思想は1920~30年代の古典的なユーラシア主義者と同様、反欧米、反自由主義、全体主義、イデオロギー、社会的伝統に基づいている。彼のネオ・ユーラシア主義は旧ソ連諸国、社会主義圏を取り込むとともに欧州連合(EU)加盟国を保護領にし、東は満州、新疆、チベット、モンゴルをも吸収することを提案している」(バーバシン氏ら)
「民主主義から権威主義へプーチン氏の保守化によって、ドゥーギン氏は政策について歴史的・地政学的・文化的な説明をロシア指導者が適切に行えるよう『手助け』をする絶好の機会を得た。プーチン氏はドゥーギン氏の思想が一部のロシア人にとっていかに魅力的であるかを認識し、自らの目標を達成するためにその一部を利用した」と指摘している。
爆殺は超国家主義者の口封じか
英紙ガーディアンによると、一部のロシア専門家はドゥーギン氏を「プーチン氏の精神的指導者」と呼ぶ。ドゥーギン氏の悪魔的な思想とプーチン氏の動きはシンクロしているように見える。しかしプーチン、ドゥーギン両氏は一緒に写真を撮ったことは一度もなく、ドゥーギン氏は個人的利益のためにクレムリンに近づくような人物ではないとの声もある。
ウクライナ戦争の死傷者が7万~8万人(米国防総省)に達する中、ドゥーギン氏とダリヤ氏を狙った爆殺事件はあくまでもウクライナ征服を唱える超国家主義者や強硬な愛国主義者の口封じなのかもしれない。それとも強硬派と現実派に二分するとされるクレムリンの権力闘争で、強硬派に与するドゥーギン氏とダリヤ氏を一気に始末してしまおうと企んだのか。
ウクライナの特殊部隊やパルチザンがプーチン氏のお膝元で破壊工作を実行するのは至難の業だ。ウクライナ独立記念日を前に南部ヘルソンやクリミア半島で補給路の橋や弾薬庫、軍用空港、黒海艦隊司令部への攻撃を強めるウクライナに非人道的な兵器や手段を使う口実をデッチ上げるためのロシア側の偽旗作戦の可能性も否定できない。
事件の背景は分からない。しかし、14年以降ロシアが占領するクリミア半島だけでなく、モスクワの親プーチン派の安全すら保障できなくなってきたとしたらウクライナ戦争が大きな転換点を迎えていることを意味している。プーチン氏の足元が瓦解し始めたのか、それともロシア国内の反戦・反プーチン派一掃の口実を作ったのか、注視する必要がある。