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アジアで「ウクライナ戦争」のような危機が起きるのを防いだ、安倍元首相の功績
2019年のG20サミットにて Tomohiro Ohsumi/Pool via REUTERS
<安倍元首相はインドで「インド太平洋とQUADの父」と称賛されるように、優れた対人関係を構築する能力でアジア太平洋における安全保障上の危機を防いだ>
[ロンドン発]奈良市で街頭演説していた自民党の安倍晋三元首相(67)が8日昼前、銃撃され死亡した。奈良県警は殺人未遂容疑で同市在住の元海上自衛隊員の無職(41)を現行犯逮捕、容疑を殺人に切り替え10日に送検する。今のところ政治的背景はないものの、テロという暗い時代を予感させる重大事件だ。
安倍氏は2006年、52歳という戦後最年少の若さで、初の戦後生まれの宰相となったものの、健康上の理由で翌年、辞任した。しかし12年の総選挙で政権に返り咲き、首相に再登板した。通算の在任期間は3188日、歴代1位の長期政権を担った。靖国参拝や、森友学園を巡る公文書改ざん、加計学園、「桜を見る会」問題など「政権私物化」の批判もあった。
しかしロシア軍のウクライナ侵攻のような安全保障上の危機がアジア太平洋で起きなかったのは安倍氏の功績と言っても過言ではない。安倍氏は第1次政権下の07年、インド国会で「二つの海の交わり」と題して演説し、インド太平洋という戦略概念を早くも提唱している。これが日米豪印4カ国による「安全保障ダイヤモンド」に発展していく。
安倍氏はこう演説している。「私たちは今、歴史的、地理的にどんな場所に立っているのでしょうか。それは『二つの海の交わり』が生まれつつある時と、ところに他なりません。太平洋とインド洋は今や自由の海、繁栄の海として、一つのダイナミックな結合をもたらしています。従来の地理的境界を突き破る『拡大アジア』が明瞭な形を現しつつあります」
「インド太平洋とQUADの父」
もともと04年のスマトラ沖大地震をきっかけに発足した日米豪印4カ国は基本的価値を共有し、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」を目指すようになった。今では「QUAD(4カ国)」と呼ばれ、今年2月には第4回外相会合、3月に首脳テレビ会議、5月に首脳会合が開催されている。安倍氏の安全保障概念がアメリカを動かしたのだ。
インドの英字紙フィナンシャル・エクスプレスは「インド太平洋とQUADの父」と安倍氏の功績を称えている。「安倍首相の下、日本とインドは初めて防衛・外交の2+2閣僚対話を行い、海洋安全保障、QUAD、インフラ分野での連携が強化された。インド太平洋においてインドは中国の覇権とバランスをとるための重要なプレーヤーとして認識された」と指摘した。