コラム

ウクライナ戦争の負傷者を、日本の技術と善意で救え! 「人力車イス」への現地の期待

2022年06月18日(土)18時32分

「資金不足で効果的な高額医薬品が限られている」

クリアチョク教授は「チェルノブイリ事故でも今回のロシア軍侵攻でも私たちは大きな課題に直面した。チェルノブイリでは知識も医薬品も不足していた。現在、当時より状況は改善され、治療は続けられた。しかし資金不足で医薬品が不足している。特に非常に効果があるターゲット治療の高額医薬品が限られている」と国際社会からの支援継続を訴えた。

220618kmr_uwc06.JPG

早速「JINRIKI QUICK」を車イスに装着して試運転(キーウの国立がん研究所で筆者撮影)

中村氏はポーランドから日本に帰国後、すでに700台も中古の車イスを確保したという。「9月にはJINRIKI QUICKを500セット持って再渡航する計画ですが、車イスもJINRIKI QUICKももっと多くウクライナに届けられるよう努力したい。そのためには日本政府の協力も必要だ」と話している。岸田文雄首相の指導力が期待される。

国立がん研究所のあとFFUの倉庫も訪問した。ボランティア約20人が、家族4人が1週間暮らせるぐらいの食料約10キログラムの支援袋を作っていた。500家族分をキーウ近郊に配布する。食料無料配布のニーズが高いため、東部ドニプロや南西部の港湾都市オデーサにも倉庫を開設するという。

FFUのニコライエンコさんは「ロシア軍の侵攻で家や財産、仕事を失った人たちは日々の食べ物に困るほど困窮している」と表情を曇らせた。「JINRIKI QUICKは日本がウクライナ側に立っている、もっともっとウクライナの人々を支援できるという強いメッセージになる。心から感謝している」と話した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ失業率、1月6.2%に上昇 景気低迷が雇用に

ワールド

ミャンマー軍事政権、非常事態宣言を延長 「総選挙の

ワールド

焦点:トランプ氏が望む利下げ、米国以外で実現 FR

ビジネス

12月住宅着工戸数は前年比マイナス2.5%、8カ月
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story