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ウクライナ戦争の負傷者を、日本の技術と善意で救え! 「人力車イス」への現地の期待
6月17日、車イスの補助具「JINRIKI QUICK」10セットを手渡された国立がん研究所のシプコ所長(右、FFU提供)
<福祉用具会社経営・中村正善氏が開発した「JINRIKI QUICK」は、車イスに補助棒を付けて人力車のように引っ張ることで移動が楽になるアイデア福祉用品>
[キーウ発]6月17日、福祉用具会社経営、中村正善氏が開発した車イスの補助具「JINRIKI QUICK」10セットがキーウの国立がん研究所に届けられた。隣国ポーランドで中村氏が支援団体「フューチャー・フォー・ウクライナ(FFU)」に20セットを寄贈していた。残り10セットはリハビリ施設やパラリンピアンの金メダリストがすでに使用しているという。
「JINRIKI QUICK」は2本の補助棒を車イスの前方に取り付け、前輪を浮かせて人力車のように引っ張るアイデア福祉用品。中村氏が東日本大震災をきっかけに起業して開発した。車イスでの移動が困難な草地や砂浜、雪道でもこの補助具を取り付ければ簡単に移動できる。階段や段差、自然災害、戦災による瓦礫の中でも2人が補助すれば移動が可能になる。
筆者と妻の史子=元日本テレビロンドン支局報道プロデューサー=は寄贈先探しを手伝ったご縁で5月28日~6月4日、中村氏らの「チームJINRIKI」ポーランドキャラバンに同行した。ウクライナでは東・南部でロシア軍との戦闘が続き、今も戒厳令が敷かれている。今回、中村氏らはスケジュールがつかず、ウクライナ入りを断念した。
この日の引き渡し式は日本の共同通信だけでなく、ウクライナのテレビ局も取材した。中村氏も日本からSNSのテレビ電話で参加した。国立がん研究所のアンドリー・シプコ所長は「ウクライナでは現在、多くの人が車イスを必要としている。この補助具があれば車イスを利用する患者の移動が簡単になる」と表情をほころばせた。
兵士の負傷者数は軍の機密事項
国立がん研究所は臨床・研究において国際的な評価を得ているがんセンターで、ウクライナの専門的かつ高度医療に不可欠な存在だ。年間25万人が診察に訪れ、3万人が治療を受けている。研究所は現在、ウクライナ軍の監視下に置かれており、FFU戦略開発責任者オレーナ・ニコライエンコさんの仲介で取材が可能になった。
シプコ所長の案内で研究所内を回ると、足を負傷した2人の屈強な男性に出会った。2人の手はゴツくて分厚かった。1人は車イスを利用していた。もう1人は間もなく退院する。シプコ所長は「砲弾の破片で負傷した」と説明した。2人が民間人なのか、ウクライナ軍や領土防衛隊の兵士なのかは教えてもらえなかった。兵士の負傷者数は軍の機密事項なのだ。