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死を覚悟した男と、「暗い絵」を描く子供たち...ウクライナ西部で見た「平和」の現実
「暗い絵を描く子供たちもいる」
近くのユニセフ(国連児童基金)の仮設テント内には避難所の子供たちが作った雲と雨の飾り付けや、祖国の繁栄と健康を願う人形、大きな絵が飾られていた。幼児用品の提供や子供たちへの教育支援を行っている。女性ボランティアのオレーシャ・ダニシェンコさん(39)自身、キーウから逃れてきた避難者だ。その気になれば仕事はすぐに見つかるという。
「地域の子供たちを含めて100人以上がこのテントにやって来ます。みんなで大きなライオンやウクライナの絵を描いたり、ボードゲームやバレーボールを楽しんだりしています。しかし幼心に戦争体験が刻み込まれ、暗い絵を描く子供たちもいます。そうした場合、すぐに心理療法士に診てもらって心の支援をしています」とダニシェンコさんは語る。
避難所からの帰り、ベンチに座って休んでいた3人連れの兵士に出会った。うち1人は戦争が始まる前はロンドンで暮らしていた。「20年前に祖国で2年間、徴兵された経験がある。演習を終え、リビウに来たところだ。命じられれば東部戦線に戻るだろう。ロシア軍の砲撃が正確でないから、まだ助かっている。正確になれば大ごとだ。写真はダメだよ」と話す。
午後8時すぎ、リビウ中心部に空襲警報が鳴り響いた。しかし、みんな何事もなかったように平然と歩いている。「平和」になったというより「戦争」が日常化したと表現した方が正しいのかもしれない。