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仏大統領選目前のマクロン、「プーチンとの対話」をやめる訳にいかない理由
フランスのロマンティック・コメディ映画『シラノ・ド・ベルジュラック』に主演した仏俳優ジェラール・ドパルデュー氏(73)はプーチン支持者として有名だ。ドパルデュー氏は2013年、税金が高い祖国を捨て、ロシアの市民権を取得した。黒海のリゾート地ソチでプーチン氏から直接ロシアのパスポートを受け取った。
ドパルデュー氏は公開書簡で「私はロシア、人々、歴史、作家、文化、知性を愛している。ロシアは偉大な民主主義国だ」と称賛を惜しまなかった。15年にはロシアのクリミア併合を支持し、ウクライナから5年間入国を禁止された。しかし今回のウクライナ侵攻でようやく「狂気の、受け入れ難い、行き過ぎた行為だ」とロシアを非難した。
欧州のロシア依存はスエズ危機から始まった
フランスは西側では比較的ロシア好きが多い国だ。文化的なつながりもある。今回、ウクライナへの武器供与や対露制裁を主導するアメリカやイギリスのロシア好きは20年12月時点でそれぞれ19%、24%。逆にロシア嫌いは71%、70%にのぼる。これに対しフランスのロシア好きは35%、ロシア嫌いは57%で、西側主要国の中ではイタリアに次ぐ親露国である。
アメリカと対立した1956年のスエズ危機以降、フランスは仏独関係を軸に欧州の強化を図り、その中で祖国の利益を追求してきた。対米追従に走ったイギリスの外交政策とは正反対だ。中東のエネルギーに自由にアクセスできなくなった西欧は旧ソ連へのエネルギー依存を深める。EU(欧州連合)は石炭・ガス輸入の45%、石油輸入の25%をロシアに依存する。
欧州がロシアに対して強く出られなかった歴史的背景にはスエズ危機がある。
制裁を科した上でプーチン氏との対話継続を主張するマクロン氏に対して、ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相は「大統領、あなたは何度プーチンと交渉したのか。それで何を達成したのか。アドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ポル・ポトでも交渉するのか。ロシアには大量虐殺の責任がある」と厳しく批判した。
自民党の安倍晋三元首相は首相在任中にプーチン氏と27回会談し「平和条約交渉をより大きく進めることができた」と胸を張った。エリゼ宮(仏大統領府)によると、マクロン氏は今年に入って16回以上プーチン氏と話した。マクロン氏は「私はロシアとの対話に努めてきた。欧州各国首脳と同様に停戦について議論した。自己満足でも甘えでもない」と反論した。
ルペン氏に猛追されていることを意識して、マクロン氏は「ポーランド首相の発言はスキャンダラスだ。ウクライナ問題でクレムリンに立ち向かうEUの結束を弱める恐れがある。モラヴィエツキ氏は極右政党の出身で、大統領選で自分のライバルであるルペン氏を支持している」とまで言った。