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仏大統領選目前のマクロン、「プーチンとの対話」をやめる訳にいかない理由
ハンガリー首相「ロシアの原油・天然ガス制裁はレッドラインだ」
ハンガリーでは4月3日の議会選(一院制、任期4年)で、ロシアや中国との関係を重視するビクトル・オルバン首相率いる中道右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」など与党連合が定数199の3分の2以上に当たる135議席を獲得した。オルバン氏は「月から見えるほど大きな勝利を収めた」と宣言した。
ハンガリーはEUと北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが、オルバン氏は「ロシアの原油・天然ガスに対する制裁はレッドライン(越えてはならない一線)だ。制裁は欧州経済にも大きな打撃を与えている」とブダペストでロシア、ウクライナと独仏の停戦協議を開くよう呼びかける。米欧がウクライナに供与する武器が自国内を通過するのも拒否している。
オルバン氏は6日、要請があればハンガリーはEUの方針に反してロシア通貨ルーブルで天然ガス代金を支払うことでプーチン氏と合意したことを明らかにした。ハンガリーのシーヤールトー・ペーテル外務貿易相は「これはわれわれの戦争ではないので関わりたくないし、関わるつもりもない」と述べた。
シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)パリ事務所のタラ・バルマ所長は「EUレベルではエネルギーのロシア依存を減らすとともに国防費を増やすことが大きなテーマになっているが、仏大統領選では外交や欧州問題が議論されることはない。主な争点はエネルギー価格や購買力、学校、交通など国内問題だ」と指摘する。
「中露接近が欧州に悪影響を与える」
バルマ所長によると、12人の大統領候補のうち外交や欧州問題を扱った経験があるのはマクロン氏だけ。「マクロン氏は以前から中露接近が欧州に与える悪影響を心配していた。彼の基本的な考え方はロシアを中国から引き離すことで、プーチン氏の安全保障上の懸念にも理解を示した」と解説する。安倍、マクロン両氏の対プーチン外交は共通している。
ルペン氏は14年、ロシアの銀行から政治活動の資金として900万ユーロ(約12億1700万円)の融資を受けた。彼女はウクライナの話題を避け、エネルギーや食品価格の高騰に対する有権者の不満をあおる。「エネルギーや生活必需品にかかる税金を下げ、企業に最低賃金を上げるインセンティブを与え、あなたのポケットにおカネを戻す」と訴える。
仏大統領選最大の争点は購買力だ。マクロン氏は大統領就任後、解雇規制の緩和や富裕層減税を進め、「金持ち、大企業優遇の大統領」と皮肉られた。18年には燃料税引き上げを引き金に「黄色いベスト運動」がフランス全土で吹き荒れた。マクロン氏とルペン氏の一騎討ちになれば、決選投票でゼムール支持者は極右つながりでルペン氏支持に回る可能性がある。
フランスの有権者にとってウクライナの戦争や欧州の安全保障より、エネルギーや食品価格の高騰で生活が貧しくなる方がずっと心配だ。外交で大きくリードしていたはずのマクロン氏は国民一人ひとりの購買力低下で守勢に立たされている。ECFRのバルマ所長は「投票率が大きな波乱要因になる」と表情を引き締めるのだが...。