コラム

「ロシア軍は雪に強いシベリアの部隊を配置した。クリミアの時と同じだ」──ウクライナ兵を訓練した元米兵に聞く

2022年01月31日(月)10時43分

――東部と南部はロシア語を話す人が多く、西部と北部は欧州に近いと言われています。ウクライナは親露派とそうでない人たちとに分断されているのでしょうか

ロペス氏:14年の紛争以来、地政学的な分断はあったと思う。紛争が続き、ロシアと親露派分離主義者たちは約束したお金、約束した食料、約束した土地を国民に人々に与えることができなかった。

親露派分離主義者たちは「われわれは戦争に勝った」と言うことが難しくなっている。片やウクライナ政府は前進している。穀物は売れ、武器も売れ、西欧諸国との経済的な結びつきを強めている。

ドンバス地方のうち親露派分離主義者が支配するドネツクやルガンスクには製鉄用の石炭がある。アルチェフスクという都市にある製鉄工場がロシアの頭の中にある。ウクライナ最大の戦車、弾薬、兵器工場がある。アルチェフスクには鉄と仕事、技術がある。

――昨年夏、世界はアフガンから無様に撤退する米軍の惨状を目の当たりにしました。プーチン氏はバイデン氏に弱さを見たのでしょうか

ロペス氏:私の会社でも何百、何千もの協力者を現地に残してきた。私は毎日アフガンの男性から「助けて下さい。助けて下さい。私たちを脱出させて下さい」というメールを受け取っている。

プーチン氏は欧州の国々にアメリカは何の役にも立たないし、張子の虎だ、だから助けに来ないと思わせようとしている。しかしNATOは対応している。欧州の国が欧州の国を侵略しようとしていることを忘れてはいけない。そこが大きな違いだ。

米欧諸国はみなが協力すれば価値のある戦いになると考えている。ラトビア、エストニア、リトアニアはすでにロシアの複数の階層の攻撃に直面している。国境を越え、バルト三国の防空能力を試している。ウクライナだけの問題ではない。地政学、軍事、経済圏では欧州全体の問題だ。

――バルト三国に対してロシアはすでにハイブリッド攻撃を仕掛けているということですか

ロペス氏:彼らは圧力をかけている。これはロシアの特殊部隊のやり方だ。探って、探って、事件を起こす。調査して、調査して、事件を起こす。彼らは相手の能力を把握するだけでなく、偵察によって経路を設定し、どこに弱点があるのかを確認し、どのように対応するか、どのように素早くできるかを考えている。

――バイデン氏はどのように対応すべきですか

ロペス氏:個人的にはウクライナ問題に関してはレッドライン(越えてはならない一線)を設定すべきだと考える。もしプーチン氏がどんな侵略でも行えば、ウクライナに殺傷兵器を供与し、ポーランドやハンガリー、バルト三国に部隊を展開させるべきだと考える。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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