コラム

「ロシア軍は雪に強いシベリアの部隊を配置した。クリミアの時と同じだ」──ウクライナ兵を訓練した元米兵に聞く

2022年01月31日(月)10時43分

――米陸軍ではどんなことをされていましたか

ロペス氏:米陸軍で1974年から2004年まで機甲と空挺に従事した。イラクやアフガニスタンにも従軍した。米ケンタッキー州で戦車戦の訓練を受けたのでロシア軍の戦車や戦術には詳しい。カリフォルニア州で民間警備会社を経営するようになって再びアフガンに関わったが、14年に離れた。昨年8月には警備の専門家を出してアフガン脱出作戦を支援した。

――ロシア軍が約13万人の部隊をウクライナ周辺に展開しており、バイデン氏は2月にウクライナに侵攻する可能性が明確にあると発言しました

ロペス氏:今の状況は第一次世界大戦の開戦前夜と同じだ。軍が動員され、動員され、動員されている。操車場の衛星写真を見ると、ロシア軍の戦車や重火器がずらりと並んでいる。問題は、ロシア軍は兵士たちに食事を与え、世話をしなければならないことだ。

プーチン氏にとって兵士を待機させ続けるのと侵攻させるのとどちらに価値があるのか。兵士にとって侵攻せずに現場で待機し続けることは本当に難しいことなんだ。分かるかい。

――分かります

ロペス氏:東と南東のウクライナ国境を10万人のロシア軍が取り囲み、ベラルーシのどこかに5万人の部隊がいる恐れがある。この2週間で起こった興味深いことはロシア軍がウラル山脈以東のシベリアから兵士や装備を運んできたことだ。14年にクリミアに侵攻した時も同じことをした。その部隊は雪の中でよく戦える。ロシアはそれらの兵の犠牲を厭わない。

――ウクライナ軍にロシア軍の侵攻を食い止める力があるのでしょうか

ロペス氏:ウクライナは(13年10月に撤廃したばかりの)徴兵制を14年に復活させた。当初、彼らは入隊することを望まなかった。しかし親露派分離主義者の脅威ではなく、ロシアの脅威が本物であることを理解すると彼らは軍隊に入った。14年には戦えるウクライナ軍は6〜8千人しかいなかった。

今では予備役を含め50万人以上のウクライナ軍がいて、そのうち25万人は本当によく戦える。ウクライナで製造された戦車、対戦車ミサイル、武器が以前よりたくさんある。地上部隊の状況、食料、ロジスティックのすべてがそろっている。

一方、ウクライナ軍に十分に備わっていないのは対空防御能力だ。いくつかはあるが、すべてではない。アメリカやNATOはジャベリンのような対戦車ミサイルなどを供与してきた。

新しいウクライナ軍は非常に優秀な軍隊だ。おそらくこの1カ月半の間により多くの義勇兵大隊の訓練を始めている。アゾフ大隊のような14年からある古い義勇兵大隊ではない。毎週末に新しい義勇兵大隊は訓練を受けている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

相互関税は即時発効、トランプ氏が2日発表後=ホワイ

ワールド

バンス氏、「融和」示すイタリア訪問を計画 2月下旬

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議

ワールド

米、中国軍事演習を批判 台湾海峡の一方的な現状変更
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story